天女になった蝶柱 肆

133話 ページ12

『はぁ……。私はやっぱりここを出て行った方がいいんですかね……』


月見亭で1人反省会。

もう何もかもが嫌になってきた。


『大体、なんで私が前の天女の尻拭いをしないといけないのでしょうか』


全て放棄して、早く元の世界に戻りたい。

こんなことなら、猗窩座の攻撃を受けたときに意識不明なんかにならずに死んだ方がよかったとさえ思ってしまう。

でも……
河野さんから聞いた話は私だって許せない。

そんな奴の餌食になった上級生も可哀想だとは思う。


『あーもう……』


本当にどうするのが正解なのか分からない。

自分で言うのもなんだが、私は要領がいい方で、なんでも卒なくこなすことができる。

そうであるがゆえ、思い悩んだことがほとんどない。

まさか、それがこんなところで足枷になるとは思っても見なかった。


『カナエ姉さん……私はどうすればいいのでしょうか……』


返ってくるはずもない返事を求めて、私は天を仰いだ。

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＿＿＿＿同時刻、どこかの空間


「……様、Aさんが困っているようですが」


とある「声」がそう言うと、横にいる女性が返事をする。


「……あの子には、柱として様々な問題を解決する力も身につけてほしいの。手出しはいらないわ」


どこか聴き覚えのある、懐かしい声だ。


「……そうですか。……様がそうおっしゃるのであれば」


「声」はそれだけ言って、その場を離れた。


「……A、頑張って。あなたならできるはずよ」


心配そうに言ったその女性は、桃色の美しい瞳を伏せ、遠く離れた少女に思いを馳せた。


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＿＿＿＿Aの部屋の前


「天女様……！待っ」


河野サクラは、Aを追いかけて部屋を出ようとしたところで忍たまとはち合わせ、思わず足を止めた。

上級生は誰しも気まずそうな顔をする。

四人目の天女のときに植え付けられたトラウマが原因で、普段はすぐに逃げるサクラだが、今日は違っていた。


「そんなところで突っ立てる暇があったら、天女様を探すのを手伝って。あなたたち、天女様大好きでしょ？」

「大好き……？」


何人かが少し赤くなった。

それを見たサクラはため息をつく。


「分かりやすすぎ。先生方が見たら怒るわよ」

「いや、人間としては尊敬しているけど、そういう対象かどうかは……」

「なんでもいいから。とにかく手伝って。私、天女様に謝りたいの」


サクラは再び走り出し、上級生も互いに顔色を伺いながら、その後を追った。

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