【東方project】甘く冷静な恋を貴女と。【短編集】 (ページ4)

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訪れる未来の幸せ―【フランドール・スカーレット】ページ4

悪魔の妹―フランドールの傍に彼女―Aが来てから、フランドールの性格はかなり変わった。そしてフランドール自身も。

「ねえ、A～。本読んで～」
「ん、良いよ。どの本？」
「えっとね…これ！」
「ほ～…シンデレラね」

しかしこれはありふれたシンデレラではなく、グリム童話の『灰かぶり姫』。内容が残酷すぎて子供に読ませられるような代物ではないらしいが、フランドールはそんな事はどうでも良いようで。
簡単な内容としては、『魔法使いではなく白鳩が主人公を助ける』、『ガラスの靴に足が合うよう、姉たちは踵と爪先を切り落とす』、『主人公の両隣に座った姉たちは肩に止まった白鳩に両目くり抜かれる』などが上げられる。ハッピーエンドで終わらせる某夢の国とは真逆の物語だ。

「肩に止まった白鳩に両目をくり抜かれ、二人のお姉さんたちは盲目になってしまいました…と」
「完全に自業自得よね、この二人」
「まあ、ハッピーエンドで終わる本もあるから、今度読んでみな」
「うん、そうする」

無邪気に笑う幼い吸血鬼を見て、姉のレミリアに似ているなと実感した。姉妹であるから似ている似てないもないが、唯一瞳の色が同じであるということくらいしか思い当たらない。だが、笑う笑顔もしぐさもどことなく似ている。

「ねえ、A。私のことギュッてして？」
「はいはい、お姫様」

後ろから優しく抱きしめると、フランドールは嬉しそうに声を漏らす。

「私ね、Aにこうされるのが一番好きなの。だからずっとギュッてしてて」
「分かってるよ」
「ん、ありがと…」

小さくあくびをすると、Aに身を任せ、小さく幼い声で言った。

「このまま寝ても良い？」
「どうぞお好きに。フランが眠りにつくまで、こうしといてあげるからさ」
「それじゃあ、おやすみ…A」
「ん、おやすみ」

そうしてからフランドールが眠りにつくまで、そう時間はかからなかった。
昔はあんなに荒れていて、眠る暇すら無かったのに、今となっては眠る姿も見た目じゃただの幼い少女にしか見えない。
人に限らず、生きているものは皆、誰かが傍に居てくれると変わるものなのだなと実感したA
だった。
これからのフランドールの未来は誰にも分からない。けど、きっと良い未来にしてくれる人が現れるはず。今もそう願うばかりだ。
フランドールがこれから先も幸せで居られるように、と。