33 ガールズトーク ページ34
シルバさんに頭をさげてキッチンを借りた。
久しぶりに毒のはいっていないお菓子を食べたいのだ。胃をコーティングするという他に使い道のない念能力ばかり磨かれている。
小麦粉、ベーキングパウダー、それに粉砂糖。
ひさしく触れていない道具に心が踊る。
魔法使いにでもなった気分だ。
「おまえ、何をたくらんでいるのかしらないけど、料理する気じゃないでしょうね?」
キキョウさんが変な質問をしてきた。キッチンで他に何をしろと?食べていきますか、と社交辞令で聞いてみる。どうせ断るだろうと思っていたら素直にイスに腰かけられた。あーあ。厄介な客が来ちゃったなぁ。
「わたしとキキョウさんって、似ているらしいですよ」
「え?」
「ゼノさんが言ってました。あはは、黒髪だからですかね」
「嫌味かしら。私とお前が、似てるわけないじゃない」
機械式のスコープがキュインと耳障りな音を立てた。
「憎い、憎い、憎い……ホンット憎たらしい……だってお前は頭がよくて教養があって、愛想を振りまくのがうまくて……私が苦労して身につけたもの全部、当然のような顔で……恵まれるのも大概にしなさいよ」
キキョウさんはドレスの裾をぎゅっと握りしめ、わたしを睨めつける。
「ねえ、わかる?スラム出身の私が、どれだけ努力して、あの人の妻として認められたのか、ゾルディック家の一員として受け入れられたのか……想像を絶する屈辱を味わされたわ。だけど逃げなかった。私はどうしてもあの人の子を生みたかった。トンビは鷹になれなくても、鷹の子を生むことはできるって、証明したかった」
もしわたしがキルアの子を孕むとしても、暗殺家業に捧げるつもりはない。だからなおのことわたしに名前を分けたくないんだろう。
どうして。どうして。五人もいるのに、よりによってキルア。次期当主、最有力候補。唯一、銀髪の持ち主。ゾルディックの血を色濃く受け継ぐ子。私の息子。私のキルア。
「お前がキルの子を産んだら……銀髪の子をもっと見られるのかしら」
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有希(プロフ) - mayaさん» うわあああああ!!!!!(mayaさんへの感謝と次章を読んでいただける喜び)これからもどうぞ本作をよろしくお願いします! (2021年4月5日 20時) (レス) id: 67c2a31e1e (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - フェルメルトさん» 初めまして、フェルメルトさん!コメありがとうございます。今後とも誤字脱字を見つけられたらソッと教えていただけると嬉しいです。 (2021年4月5日 20時) (レス) id: 67c2a31e1e (このIDを非表示/違反報告)
maya(プロフ) - うわああああ(感嘆と次回への期待、そしてここまで書いてくれたことへの感謝の叫び) (2021年4月5日 20時) (レス) id: e6b38507b3 (このIDを非表示/違反報告)
フェルメルト - スミマセン!!一話のエラベーターってもしかしてエレベーターじゃないですか?ほんとスミマセン (2021年4月5日 17時) (レス) id: d6649fea10 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - ゾル家にやさしくされるよりぼこされたい、こんな猟奇的なユメショをリアルで好きだと言ってくれてホントに嬉しいです。弊社の夢主はゾル家に対してMなんで何されても喜びます。私個人としてもこの作品が大好きなので、どうぞ選挙編までお付き合いください! (2021年4月1日 21時) (レス) id: 67c2a31e1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:有希 | 作成日時:2021年2月11日 8時