166 酒の力 ページ26
もうすぐアルカたちの乗る飛行船のフライト時間が迫っている。暇だからフラペチーノを買ってきてやると、「Aお姉ちゃんに連絡してみたら？」っていたずらっぽく言われた。
「だから音信不通……」
「自分探しの旅に出てたんだって、ゴンくんからラインで聞いたよ。圏外にいたみたい」
「7年も！？……まあAならありえなくもないか」
「今ならお話できるよ」
オレはアルカに返事できないまま、くちびるを噤んでいた。アルカは「お兄ちゃん可愛い」なんて笑った。アルカはぶんぶんオレに手を振って、飛行船に乗りこんでいった。
それからジャンポンのホテルで一ヶ月ほど時間だけが過ぎるような毎日を過ごした。これと言ったこともせず息をするだけで、マトモな記憶が残っていない。昨日もこれ食った気がする。オレ何してんだろ。何もしてないだけか。
*
「……うま」
情けねぇ話だけど、オレは酒をいれるとAとのトーク画面をひらくことができた。18になったとき酒が飲めるようになって、ハイボールの苦い味にも慣れてきた。7年も前に会話は途切れている。途方もなく長い時間の隔たりがオレたちにはあった。
「あ、やべっ！！」
後悔しても遅い。指が手汗ですべって、送るつもりのなかった『いま何してる？』が送信された。オレはもう死にそうな気持ちでスマホを握る。3分ほどして既読がつく。心臓がバカみたいにうるさい。
『久しぶり』
『自分探しから帰ってきました』
『ビスケの真似っこしてる』
ビスケ？真似っこ？何ひとつわからないのが逆に面白くて、オレは調子に乗って電話のボタンを押してしまった。ぜんぶアルコールのせいだ。
「師匠？お前がぁ？」
「ちょうど昔のわたしたちみたいな子が、ふたりで頼みこんできてさ。念を学びたいって。何かの縁だし、やってみっかと思って」
相変わらず物事を深く考えずに、楽しい方を直感で選んでよしとするそのユルさが、心配になるやら懐かしいやらで、オレは原因不明の笑いが止められない。A、A、A。Aだ。Aがいる。
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ま - 一気に読み切ってしまいました！楽しかったです！途中感情移入して泣いちゃうとこもありました笑更新楽しみに待ってます！ (7時間前) (
レス) @page39 id: 46b1d29c13 (このIDを非表示/違反報告)
◎SaE(プロフ) - あなたの書く文章が大好きです。 (12月22日 11時) (レス) id: 5b13a1df84 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 更新待ってます。 (9月2日 23時) (レス) id: fdd6e06bf4 (このIDを非表示/違反報告)
こもれび(プロフ) - 有希さんと好みが似ているのか、好きなキャラや印象で近しいものが多くて共感しまくりです。こちらの作品を詠ませて頂くのは多分これが3度目なのですが、性懲りも無く毎度同じ場面で泣いてます。顔面が涙でぼろぼろです。言葉巧みな表現が大好きです。応援しています。 (2022年12月28日 4時) (レス) @page39 id: 4d4f4ab205 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇる-ameizumi(プロフ) - 今出ているところまで読み切りましたがとて好きな文章構成や内容で、ところどころでほんとに泣いてしまいそうでした。終わりが見えてきそうですが最後まで応援しています。 (2022年12月23日 0時) (レス) id: 5d2780f034 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：有希
| 作成日時：2021年11月14日 16時
