△ 好きな花はタンポポ ページ26
「もうすぐ最終選別ですね」
しのぶさんクラスの美人になると、刺身を口に運ぶところまで画になるんだなぁ。幼い笑顔にきゅんとしてると、隙あり、と横からマグロを取られてしまった。全力で許す。あれから何回か食事を重ねて、しのぶさんを友達と呼べる仲にまでなれた。意外と話してみると、普通にかわいい女の子で、柱だってことを忘れそうになる。
「今から怖いなぁ」
「Aちゃんなら大丈夫ですよ」
何だかむずかゆい。憧れのしのぶさんの口からそんな言葉をもらえるなんて。推し柱だもん。嬉しいのが隠しきれなくてニヤついた。
「そういえば……善逸くんとはどうですか?」
「うふふ、昨日に浅草デートしてきました。順調ですよ」
そうだそうだ。思い出した。面白い無声映画の話でもしようとすると、「おふたりは」と遮られた。
「考えてるんですか」
「何を」
「結婚とか」
結婚。結婚か。たぶん、するの。きっと、する。昨日なんてポピーの花を差し出してきて、聞いてるこっちが恥ずかしくなる何度目かのプロポーズをされた。
─「Aちゃんの好きな花は?」
─「タンポポ」
─「雑草じゃん」
─「わかってないなぁ、善くん」
わたしのふぬけた表情にすべてを察したのか、しのぶさんはやさしく頬笑んだ。
「じゃあ隊に入っても、交際をやめないのですね」
「え……そりゃまあ。その予定ですが。しのぶさんったら縁起でもないことを言わんでくださいよ。やだもう」
紅の花弁が小さく動いたのを、わたしは見逃さなかった。何も言わなかったように笑っているけどそんなはずはなかった。なぜ。なぜ隠そうとするの。
たしかに、あなた、言ったじゃないですか。
「……気をつけて、ってどういうことですか」
しのぶさんはうつくしい笑みを崩さないまま、「そのままの意味です」と返した。
「鬼狩りが愛し合うのを止めるつもりはありません。守りたい誰かが近くにいて、背中をあずけられる相手がいる。それはとても素敵なこと。ただその先にあるのが何なのか……承知しておいてくださいね」
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あき - うわぁ、HUNTERHUNTERも書いてくれるなんて……🥹🥹 (2023年1月30日 14時) (レス) @page50 id: 099b645bba (このIDを非表示/違反報告)
まっひぃ - 善逸のそういう所好きだぁー!😁かわええ (2021年11月11日 15時) (レス) @page48 id: d24aae8d9d (このIDを非表示/違反報告)
ひとみちゃんDX(プロフ) - 今まで読んだ中で一番好き! (2021年10月29日 12時) (レス) id: 0e9cb43b28 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ割り人形 - わあわあ好きだあ途中どうなったのってなったけどちゃんとハピエンで良かったああうわん嬉しすぎて嬉し涙が…というかヒロ◯カの小説も書いていらっしゃるなんて!今すぐ読んできます!あ、この作品めっちゃ良かったです!好きです!(唐突の告白 (2021年9月12日 7時) (レス) id: 7c01fc8068 (このIDを非表示/違反報告)
朝霧 sud .(プロフ) - とっても素敵でした。 (2021年9月9日 15時) (レス) id: a463316156 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:有希 | 作成日時:2019年10月4日 22時