初恋は実るためにある ２【HUNTER×HUNTER】

69　惚れてまうやろ ページ24

戻ったらゴンとキルアも一緒にいた。ホテルに着くなり借りたスーツを確認した。血の染みは……できていない。ホッとする。レオリオがキッチンから声をかけてくる。



「生姜入りの紅茶のめるか？」

「うん」

「砂糖は？」

「お願い」


　わたしはソファで手持ちぶさたに待っていた。背もたれに寄りかかると痛みが軽減される。温めてきてくれたお茶をゆっくり飲む。じんわりと指先の熱がもどって血がめぐる。彼はその間もせわしく動いて、ブランケットをひっぱりだしてきた。大げさだなぁ。



「大丈夫だよ。たかが生理なんだから」

「たかが、じゃねえ。お前の大切なものだ」



　やだな。泣きそうになる。気にかけてくれる声音は真剣で、ああ理解してくれてるんだと嬉しくなる。おバカさんで、不器用で、変態で、やさしい、そんなレオリオにわたしは何度も救われてきたし、これからもそうなんだと思う。


*


　血のついたショートパンツを黒のビニール袋につっこんで、ホテルのゴミ捨て場に向かった。ロビーをつっきっていると「誰か殺したの？」って物騒なことを聞いてくる人物がいた。それは携帯をいじるわたし(・・・)だった。


「……は？」


　ソファのうえでゆったりと足を組んだわたし(・・・)はロング丈のワンピースを着ていて、服の趣味が違う。ほかにも、どこかおちつき払った雰囲気だったり、髪を掻きあげる仕草だったり、わたし(・・・)と異なる点はおおかった。だけど顔と背格好はまるきり同じなのだ。わたしはわたし(・・・)を見つめるしかできない。


「血なまぐさい」


　言って、わたしの持つビニール袋を指さしてくる。誰か殺したか……って、そういう？この淡々とした話し方は、どこかで、


「……なんでわたしの変装してるんですか、イルミさん」


　わたし(・・・)、いやイルミさんはうっすら笑った。中身がちがうとこうも色気が出るのか。



「んー、理由はいろいろあるけど、ひとつにはキルに懐いてもらえるかなって」

「バレたら一層、距離をおかれそうですがね……」

「オレに殺されたいの？」

「いえまさか」

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