121 変態おじさん ページ28
「弾けたなんて知らなかった」
代理のピアニストがやってきてすぐわたしは横にはけた。途中で何人からか拍手をもらえた。上質なジャズミュージックが流れ出して、会場は何事もなかったように盛り上がりを取り戻す。キルアはわたしに隠してた一面があったと思ったみたいで、ちょっとふくれていた。
「キルアのプロみたいな演奏を聞かされて、わたしも弾けるって言いにくかったんだよ」
それはまだ天空闘技場で修行中で、休み時間に街を散策していて、楽器店へ入ったときのこと。キルアがちょろっと弾いたピアノは、わたしがあと二年は続けてないと辿り着けないような、そんなレベルだった。めちゃくちゃ上手。「すごいやキルア!何でもできるんだね!」ってゴンは本人がツンデレるまで褒め称えていた。
──「キルアってピアノ好きだったんだね」
──「好き?……好き」
──「違うの?」
──「わかんね……考えたことすらなかった。ダーツもピアノも料理もダンスも」
オヤジにやれって言われるからやった。嫌いじゃないから続けた……だけど好きかどうか聞かれると首を傾げるしかできなかった。ただキルアは与えられたものに応えてきた。意思のないままに。そのはずだった。
「オレ、ピアノ好きになったかも」
「……え?」
「前言っただろ。好きでも嫌いでもないって。だけど今はちょっと好きな部類になった」
「急な心境の変化だね。なんで?」
「ゴンとAがすごいすごいってバカみたいに褒めてくるから」
バカみたいってあのねぇ……そう突っ込もうとしたけど、キルアの顔を見て止めた。そんなにやさしい顔をするようになってたんだね。仄暗く危険な色をしていた瞳は、凪いだ海みたいな広がりを持つようになった。ゾルディック家から飛び出してきたばかりのキルアと今の彼、その変貌ぶりに驚かされる。
「どっちが好きなの?」ってイマジナリーダブルキルアに迫られて「やだ選べないよマイスイート……」ってフニャフニャしてると、本物から変態おじさんに対する嫌悪と哀れみの目を向けられた。
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ちーちゃん - わざわざお返事ありがとうございます!完結まで楽しみにしています! (2021年11月14日 17時) (レス) @page49 id: efb35b509b (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - ちーちゃんさん» ちーちゃん、コメントありがとうございます!最後まで楽しんでいただけるよう頑張ります!次章もよろしくお願いします! (2021年11月14日 16時) (レス) id: d83879ced4 (このIDを非表示/違反報告)
ちーちゃん - 更新嬉しいです!また頑張ってください! (2021年11月10日 15時) (レス) @page9 id: efb35b509b (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - yuriori12911さん» コメントありがとうございます。いろいろ確認したところ途中から自動変換機能が外れてしまっていたみたいです何故か。すみません。直しましたのでご報告させていただきます。ご連絡ありがとうございました。 (2021年11月10日 7時) (レス) id: d83879ced4 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - 無気力に自信が有る人さん» いろいろ確認したところ途中から自動変換機能が外れてしまっていたみたいです何故か。すみません。直しましたのでご報告させていただきます。早とちりして申し訳ありませんでした。 (2021年11月10日 7時) (レス) id: d83879ced4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:有希 | 作成日時:2021年7月16日 18時