オウジサマトオヒメサマノコイ【オリジナルNL】

思春期 セーラー服 ページ5

春。私は中学生になった。
最近は数少ないセーラー服。ひらひらのスカートがドレスみたいで、私は裾をもってくるっと一回転する。バッジは制服にはつけられないから、リメイクしてヘアピンにした。私は着替えて、お母さんや静稀ちゃんたちよりも早く、おうじさまに見せた。

「どう、新しいドレス。かわいいでしょう？」

おうじさまは、可愛いと言ってくれた。いつかおうじさまにも制服着せてあげたいな、と思いながら、應治くんの家に向かう
應治くんは学ランをうまく着こなせていた。似合ってる、とほめてくれたのが嬉しかったから、應治くんも似合ってるよ、と言った。應治くんは頬を桃色に染めてありがとう、と言ってくれた。應治くんは笑うとえくぼができるんだな、と思った。

そのあと、静稀ちゃんと合流した。静稀ちゃんが来ているセーラー服は、私とは少し違う種類で、すごくかわいい。静稀ちゃんもかわいくて、私は顔を綻ばせた。静稀ちゃんにかわいい、といったらそっちこそ、と言ってくれた。
恥ずかしげに笑う静稀ちゃんは、なんだか真っ赤なイチゴみたいだ。

いろんな人に褒めてもらったけど、どんな言葉よりも、おうじさまの“かわいい”に勝つうれしさはなかった。
私はおひめさまに近づけた。そう思えた。今でも、あのことを思い出せば、心の中が春の初めのポカポカしたお花畑みたいな気分になって、けど少しだけ、とげとげが刺さってて苦しくもなる。少女漫画で知った感情そのままに、心が動いた。もっとおひめさまに近づきたい。一緒にいたい。その気持ちが強くなった。


五月、初めて應治くんにおうじさまを見せた。きっかけは、應治くんのけが。家の前で、應治くんにばったり会ったのだ。應治くんは、いろんなところに殴られた跡があって、見ていてとても痛々しかった。喧嘩をしたらしい。心配だったから、私の部屋につれてって消毒してあげることにした。

「私にとって應治くんは大切な人なんだから、こんなことしないで！」

應治くんは私にとって大切な友達になっていた。おうじさまとは全く違う“好き”だけど、大切という気持ちに嘘はなかった。彼は目に真珠のような雫を浮かばせながら、ありがとうとつぶやいた。しばらくたった後、おうじさまをみて、こいつはだれ？と聞いてきた。

「わたしのおうじさま、世界で一番大切な人」

と教えてあげた。そっか、と彼は言った。
彼も否定しないでくれた。私はまた嬉しくなった。
彼の汗が、ピチャ。と垂れた。

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