緑色の日記 ページ23
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任務が終わり、数日ぶりに帰ってきたときにコネシマから聞いたその一言に耳を疑った。
「嘘、つくなや。嘘やろ」
「…お前の部隊のやつが裏切りもんやった。それに気ィついたAが止めようとしたんや」
「そんな、わけ…」
「そんなに信じられへんねやったら、一回自分の目で見てこい。医務室におるから」
言われてすぐ、走り出した。Aが、爆発に巻き込まれたなんて嘘だと自分に何度も言い聞かせる。誰かにぶつかって声をかけられた気がしたが、そんなことお構い無しに走り続ける。
医務室についたときには、完全に息が上がっていた。体力が尽きたわけではない、ただ激しい動悸に収まらない悪寒が気持ち悪くて仕方がなかった。
何度か深呼吸して、扉を開けた。視界に飛び込んできたのは、ベッドの上に横たわるAと、珍しく落ち込んだグルッペンに、しんぺい神だった。
「ぁ」
「…来たか、ゾム。まあ、座れ。一旦」
「ぉ、オレ、ど、どないしよ。Aが、Aが死んでもうたら俺…」
「だから、一旦落ち着け。座れ。総統命令だ」
総統命令という言葉に体が反応する。たたき込まれた忠誠心がなんとか理性を取り戻す。しんぺい神に出された椅子に座り、グルッペンと向かい合う形で座る。後ろにはAの姿があった。
「今回の件に関して…ゾムが悪いとは微塵も思っていない。全てお前が此処を空けている隙に行われたことだ。だからあまり気に病むな」
「…っ、ちゃう。何回でも気づくチャンスはあったはずや。俺がもっと疑わなあかんかった。常に警戒しとかなあかんかったんや」
「…なら、命令だ。今後この件に関しては、気にするな。態度に出すな」
命令と言われてしまってはこちらも対抗のしようがなく、ただ黙ってグルッペンを鋭い目つきで見る。
Aにチラリと視線を移すと、包帯で覆われている箇所も多いが、規則正しい呼吸をしているようだった。
「Aの体に関しても安心しろ。手術は成功、後遺症は残らんらしいから。まだ目覚めてはいないが、そのうち目覚める」
「…お、俺Aのこと見といても、ええか？」
「…ああ、お前に見張りをさせるのは、安全だろうしな」
グルッペンは少しだけ目尻を下げて、気を使ったように部屋を後にする。しんぺい神も、一服してくると言って部屋を出ていった。
突然静寂に包まれた医務室には、自分とAしかいない。早く声を聞かせてほしい。そんな願いを込めながら、震える手で彼女の体を抱きしめた。
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作者名：ﾍｰﾃﾞﾙﾄｸﾞﾚﾃｰﾙ | 作成日時：2025年8月1日 8時
