白紙 ページ22
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長い廊下を歩きながら、レパロウは考え込んでいた。例の件について話を聞けば聞くほど、ややこしくなってきてもう完全にお手上げ状態だった。その時すぐ後ろから声がして振り返った。
「よおレパロウ、なんか考え事？」
「っわ、いきなりやめて下さいよ！」
「ひひ、すまんすまん」
思ってもいない謝罪を述べて特徴的な笑い方をするのは、幹部の中で最も戦闘力の高いゾムだった。気配を消すのが得意なゾムは、普段潜入など特別任務を行うことが多く、それを日常生活の中で人に悪戯するときに最大限に悪用していた。
「あんなあ、もっと警戒せな。後ろがら空きやで？」
「いや気配消されたらもうどうしようもないでしょ」
「それはそう、俺もバレへんようにやってるし」
ゾムの相手をするだけ無駄だと思ったレパロウは、前に向き直った。そしてふと、視界の端に建物の雰囲気にはそぐわない扉が目に入った。鉄製で、まるで何かを閉じ込めているようなそんな風にみえた。
「…ゾムさん、あの部屋って」
「あぁ、あれな。何やっても開けへんねん、俺も何の部屋か知らん」
「ゾムさんなら力ずくで開けれるんとちゃいます？」
レパロウは冗談のつもりだった。その扉に近づこうと一歩踏み出したとき、視界がぐらりと大きく揺れて、天井がみえた。何が起こったのかいまいち理解できなかった。その数秒後に、ようやくゾムに倒されたのだと理解した。ゾムの方を見やれば、無表情だったが、突然我に返ったように飛び退いた。
「ぁ、すまんつい…は、腹減っとるやろ。飯行こーぜ飯。俺奢るわ」
「え？は、ちょ！」
ゾムは乱雑にレパロウの首根っこを掴んで引き摺るようにその場を離れて行く。まるで扉の中に何があるのか知っているような素振りだった。聞きたいのに、聞けなかった。
一つは、ゾムが単純に怖かったから。一度暴走すると歯止めが効かない人間だと思ったから。
もう一つは、以前今にも死にそうなトントンに出会ったときに聞いた話を思い出したからだ。
『ええか、レパロウ…ゾムに食事、誘われても、絶対に断れ、逃げろ…さもないと、…ゔっ』
「ちょ、シャオさんとかショッピさんとか連れて行きましょうよ！人数多い方が楽しいでしょ？」
「あー…それもそうやな」
先ほどのあの様子などまるでハナからなかったかのように嬉々としているゾムを見て、レパロウはため息をついた。
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作者名：ﾍｰﾃﾞﾙﾄｸﾞﾚﾃｰﾙ | 作成日時：2025年8月1日 8時
