茶色の日記 ページ16
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夕方、図書館にて、外の景色がよく見える窓際の席で、大量の書類に囲まれながら机に突っ伏している女性に、そっと声をかける。
「…大丈夫ですかAさん」
「あ、エミさん。ごめん、此処居心地良くてつい…」
かなり疲れているのだろう、すぐには起きあがろうとはせず暫くしてゆっくりと体を起こした。髪の隙間から見える瞳がなんとも言えない雰囲気を醸し出していて思わずドキリとした。
「無理して起きなくてもいいですよ。疲れているんでしょう、もう少しゆっくりしていて下さい」
「…ほんなら、お言葉に甘えて」
言って、また机の上に顔を伏せた。夕焼けに照らされた髪に少し赤みがかかっていて綺麗だと感じた。何故、こんなにも全てが美しいのだろうと疑問にさえ思った。
「エミさんって、綺麗な目してるよな」
ふいに発せられた言葉に思わず目を見開いた。そんなことを言われたことは生まれてこのかたなかった。流石に冗談だろうと笑おうとすれば、Aさんと目があった。なんだか今日だけで、寿命が半年は縮んだ気がする。
「そ…んなことないですよ。Aさんは褒めるのが上手ですね」
「いやいや、ほんまやって」
Aさんはポケットから何かを取り出す素振りを見せると、突然目の前にナイフを突きつけてきた。驚いて後ろに仰け反りそうになったが、ナイフに反射して自分の目が映っていた。淡く彩度の薄い瞳は夕焼けのおかげで朱色のようになっていた。確かにこうみれば、少し綺麗な気がした。
「…少しは綺麗に見えますね。でも、これは危ないから今後はやめて下さいよ」
「あ、ごめん。つい癖で」
今後は気をつける、なんて申し訳なさそうに謝られてしまってはこちらも怒るに怒れない。小さく息を吐いて、優しく声をかけた。
「別に、そこまで凹まんといて下さい。気にしてませんから。ほら、クッキーでもいかがですか」
「え、ええの！」
途端に目を輝かせて見上げてきた。どうやら彼女の好物だったようだ。以前、オスマンさんに土産といい貰ったものがあったはずだ。待っていて下さいと一度第二の個室とも言える司書室に戻り、棚の中を探していると可愛らしいブリキ缶を見つけた。側面にはクッキーとお洒落なフォントで書かれていた。
Aさんの元へ戻ろうとしたとき、ふとある考えが思いついた。
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作者名：ﾍｰﾃﾞﾙﾄｸﾞﾚﾃｰﾙ | 作成日時：2025年8月1日 8時
