心地いいテンポ ページ27
オレが手伝う隙も与えず、棚から詰め替え用のハンドソープを取り出すと、手際よく詰め替えて、「ちゃんと洗いなよ」と、言い残して、さっさとリビングに戻るキミの後ろ姿をゆるい返事で見送って、手を洗う。
よくよく考えてみると、いや、考えてみなくても、このおかしな状況に、徐々に慣れていくオレ達が可笑しくなってくる。
「フフッ 何これ。ありえねー。」
口に出してから、鏡を見れば、可笑しそうに笑う『ニカ』じゃないオレと目が合った。
やめとけ、やめとけ……。
無理やり振り返る過去に、引き戻され、温度をなくしていく気持ちが、切ない。
目を逸らして、ブレーキをかけて、嘘ついて、誤魔化して……そうやって、生きていけば、そこそこ幸せ。
そこそこ幸せなら、みんな幸せ。
それでいい……。
気づきそうになる感覚を押し殺した。
リビングに戻ると、香ばしいお茶の匂いがした。
キッチンに立つキミが、丸い手触りの良さそうな急須で、お茶を入れる姿を盗み見る。
アンバランスなパーティドレスとキッチンの組み合わせ。
ねぇ、普段は、どんな夜を過ごしてるの?
引っ越してきた日、オレの部屋の前を通った、飾らないナチュラルな格好のキミを思い浮かべた。
……何考えてんだ、オレ!
視線をリビングに向けて、キミから意識をそらす。
「どうかした?」
突然、話しかけられて、ドキッとする。
本当のことなんて言えるわけないから、目に入った光景をそのまま口にした。
「んー…。
なんか、オレんちよりも広い気がする。」
角部屋って違い以外は、同じはずの間取りなのに、何かが違ってる気がした。
「それは、散らかり具合の差では?」
「ええーっ、こう見えて、オレ、意外とキレイ好きだよ。」
「あら、それは、失礼しました。
ほうじ茶飲む?」
含み笑いで答えるキミに、少しだけムキになって反論したのに、軽く流されて、お茶を勧めるてくる。
心地いいテンポ。
「飲むっ!」
だから、オレも、そのテンポを崩さない様に返事をして、キッチンカウンターの脇にくっ付けるように配置された、二人用のダイニングテーブルに座って、カウンター越しにキミを見上げる。
心地いいテンポ。
オレを知らないキミ。
恋愛とは違う関係って、こういう事かな。
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植尾あい(プロフ) - ノンさん» はじめまして。キミ声、何度も読んでもらえたなんて嬉しいです。ニカ中毒だなんて!光栄です!私の言葉、気に入ってもらえましたか?よかった!これからも、のんびりですがキミ恋もよろしくお願いします(*^^*) (2017年4月25日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ノン - 初めてコメントさせてもらいます。キミ声にハマって、何度も読ませてもらって、何度も涙して、ニカ中毒になりました。(笑)ニカsideも楽しみに読ませてもらっています。楽しみがまた増えました。ありがとうございます。あいさんの言葉の表現、大好きです。 (2017年4月23日 23時) (レス) id: d6afd85c10 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ナナさん» 実は、見つけてたんです(ノ∀`*)ンフフ♪ なんか、こういううっかりしてそうじゃない?(笑)まだまだ、距離を置いて慎重なニカが、この距離をどうしていくのか、楽しみにしていて下さい!バンザイ! (2017年3月29日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - きななさん» バンザーイ!二階堂くんにバンザーイ! (2017年3月29日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - カギ見つけてたんだ!探したはずのポッケに入ってたとか本当にやってそうだなー(笑)ってニヤニヤしちゃった(°▽°)いつから「ニカ」が「高嗣」として接して行くのかとか、楽しみで仕方ないっ!ばんざーーーーい!! (2017年3月27日 10時) (レス) id: 6cd6e0891b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2016年12月25日 22時