梅雨《after story of キミ声》3 ページ27
着替える為に、すりガラスの引戸を閉めようとすると、頭に響くのか小声のワガママが追いかけてくる。
「ねぇ、閉めなくてもよくない?」
「いや……着替えるし。」
「オレ、彼氏よ?Aちゃんの着替え見てもよくない?」
「はいはい。」
3分の2程閉めたところで手を止めて、ニカの視界から隠れるようにして部屋着に着替えて、ベッドサイドの小さなチェストから頭痛薬を探す。
「確か……まだ、あったはず……。」
この季節、頭痛薬が欠かせないのは、私も同じで、だいぶ軽くなった箱を手に取って中身を確認する。
「ニカ、薬……。」
振り返った瞬間、薬の箱は、手から滑り落ちて、フローリングにぶつかると軽い音を立てた。
「頭、痛い……。」
痛いって、言ってる割に、結構な力で抱きしめる腕に、身動きが取れなくなる。
「大丈夫?」
そっと、その背中を撫でると、私の耳元に仔犬みたいに鼻先を擦り付ける。
「ダメ……。頭割れるかも。」
「フフッ……それは、大変。」
広い背中も、四角い肩も、今日は、どこか頼りなくて、可愛い。
「ホントだからね。」
「うん。ほら、薬飲もう?」
ワガママだって可愛くて、ついつい甘やかしてしまう。
トントンっと背中を叩くと、長い腕はするりと解けて、ベッドに座って見上げる様に言った。
「お水持ってきて。」
「待ってて。」
落とした薬の箱を拾って、ニカの手に乗せると、器用に片手で箱の中から薬を取り出した。
キッチンからペットボトルを持って戻ると、両手で頭を抑えながら視線だけを私に向けた。
「はい。」
「……ありがと。」
ペットボトルを受け取ると、薬を口に入れてゴクゴクと音を立てて飲み込んだ。
梅雨《after story of キミ声》4→←梅雨《after story of キミ声》2
995人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
植尾あい(プロフ) - nanacoさん» んふんふ(//∇//)楽しんでいただけたようでよかったです!こういう雰囲気は、藤ヶ谷くんが似合いますよねぇ。また、イチャイチャするだけのお話を書きたいなーと、思いました! (2020年7月31日 17時) (レス) id: 3c990321a7 (このIDを非表示/違反報告)
nanaco(プロフ) - 甘々藤ヶ谷さん!(//∇//) ごちそうさまでした、最高すぎます…(TT) ありがとうございます(TT) (2020年7月30日 23時) (レス) id: a7b3edb10a (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ナナさん» ナナさん!!!お久しぶりです!お元気でしょうか? そうなんです!星に願いをに続いて、運命なんです!伝わってよかった(^^) 切ないけど幸せな気持ちになってもらえたら嬉しいです。 (2020年5月30日 13時) (レス) id: 3c990321a7 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - あいさんお久しぶりです!!これは運命…と気づいた瞬間に涙が…。心がポッと暖かくなりました!! (2020年5月30日 1時) (レス) id: 3bad9f733c (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ソフィアさん» 年下俺様生意気な渉に迫られて、メロメロですよね。年上イメージがある横尾くんですが、こんな関係も時にはありかな?と。楽しんでいただけて良かったです! (2020年5月8日 22時) (レス) id: 3c990321a7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:植尾あい | 作成日時:2018年9月12日 22時