嫉妬《Ki→S》3 ページ20
名古屋から一人で出てきて、きっと、不安なことも多かったんだと思う。
入学式の後、慣れないスーツでキョロキョロしながら歩く健永を思い出す。
きっと、そこに、「サークル決めた？一緒にBBQしない？」って、一番最初に声を掛けたのがオレだったんだと思う。
たぶん、孵化したばかりのヒヨコが、最初に見た動く物を親だと勘違いするってやつと同じ原理で、健永は、オレに懐いた。
気がつけば「ミツ！ミツ！」って、オレの後ろをついて回って、一人っ子だったオレも、弟が出来たみたいで嬉しかったのは確か。
オレが卒業しても、変わらない関係に、ちょっとだけ本気で弟みたいに思ったんだ。
嬉しかった。
弟の成長を見守ってる気分だった。
だから、残業で遅くなった日、オレの部屋の前で、抜け殻みたいな健永を見つけた時は、本気で心配した。
「…………ミツ。」
それだけ言って、俯いたまま黙り込んだ健永を部屋に入れてやると、丸めた背中が震えてた。
「オレ、もう、死んじゃうかも……。」
本当に死にそうな小さな声で言った。
「ほら、とりあえず上がれって。」
「ミツぅぅぅう……」
「おぃおぃおぃおぃ。」
女の子だったら大歓迎なシチュエーションだけど、相手は、随分デカい弟。
残業でヨレヨレのオレに、全力で抱きついてくるから、危うく押し倒されそうになる。
「とりあえず、座って話そうぜ。」
健永を引き剥がして、部屋の中へ押し込んで電気をつける。
「………にゃんちゃんと、別れた。」
「は？マジで？！」
ポツリポツリと話す健永の言葉に耳を傾けながら、缶ビールを差し出した。
遠距離恋愛、三年目。
学生の二人には、東京と名古屋の距離は、遠すぎた。
会えないという気持ちの距離が、二人には埋められなかった。
健永の愛は、彼女の寂しさには、勝てなかった。
強くないくせに、煽るみたいに飲み干していく缶ビール。
「寂しかったって……。」
「……うん。」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになって、アルコールで赤い顔の健永に、水の入ったコップを渡す。
「オレだって寂しかった。」
「……うん。」
「でも、……にゃんちゃんが一人で寂しい思いをしてるのは、もっと辛いから……。だから、別れることにした。」
その選択に、正解はない。
別れる、別れない、どちらを選んでも辛い。
「……今は、お互い辛いけど、幸せになって欲しいから。」
彼女の幸せを願って泣ける健永が羨ましかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 995人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
植尾あい(プロフ) - nanacoさん» んふんふ(//∇//)楽しんでいただけたようでよかったです！こういう雰囲気は、藤ヶ谷くんが似合いますよねぇ。また、イチャイチャするだけのお話を書きたいなーと、思いました！ (2020年7月31日 17時) (
レス) id: 3c990321a7 (このIDを非表示/違反報告)
nanaco(プロフ) - 甘々藤ヶ谷さん！(//∇//) ごちそうさまでした、最高すぎます…(TT) ありがとうございます(TT) (2020年7月30日 23時) (レス) id: a7b3edb10a (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ナナさん» ナナさん！！！お久しぶりです！お元気でしょうか？ そうなんです！星に願いをに続いて、運命なんです！伝わってよかった(^^) 切ないけど幸せな気持ちになってもらえたら嬉しいです。 (2020年5月30日 13時) (レス) id: 3c990321a7 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - あいさんお久しぶりです！！これは運命…と気づいた瞬間に涙が…。心がポッと暖かくなりました！！ (2020年5月30日 1時) (レス) id: 3bad9f733c (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ソフィアさん» 年下俺様生意気な渉に迫られて、メロメロですよね。年上イメージがある横尾くんですが、こんな関係も時にはありかな？と。楽しんでいただけて良かったです！ (2020年5月8日 22時) (レス) id: 3c990321a7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：植尾あい
| 作成日時：2018年9月12日 22時
