好きか嫌いかお気に入り《Ki》1 ページ40
自動車メーカーに就職したくらいだから、車の運転は、元々好きだった。
自分で言うのも何だけど、女子にしては、運転も上手い方だと思う。
「あ、オレ、コンビニ寄ってから帰るんで、あそこのセブンで下ろしてー。」
「了解です。」
後部座席から千賀くんの声がして、返事をしながらウインカーを出す。
小さく点滅するランプと、カチカチと規則正しい音が車内に響く。
「あ、オレも降りるわ。」
「え?」
助手席で居眠りしていた先輩が、いつの間にか目を覚まし、しれっと告げてくる。
「北山くんと横尾くん送ったら、事務所に車戻しておいて。」
「あ、……はい。」
時間を確認すれば、もう、深夜を回ったところ。
知ってます。
先輩の家、千賀くんの家と近いんですよね?
このまま、帰るんですよね?
私、今日も、終電逃すんですね。
コンビニに車を止めると、千賀くんは千賀くんのまま、車を降りた。
「お疲れ様でしたー。」
真夜中なのに、キラキラの笑顔。
「おつかれー。」
助手席のドアを開けて、私を見もしないで、声だけを置いていく先輩。
「お疲れ様でした。」
押し寄せる疲れと、飲み込めない理不尽さ。
私は、先輩を楽させる為に、この仕事を選んだわけじゃないのに……。
閉じるドアの音に紛れて溜息をつく。
「それじゃ、横尾さんちに向かいますね。」
バックミラー越しに、横尾さんに声を掛けると「お願いしまーす。」って、眠そうな声が帰ってきた。
シフトレバーに手をかけると、イヤホンで音楽を聴きながら寝ていたと思った北山さんの手が、後部座席から私の肩を叩いた。
「な、何ですか?」
急なことに驚いて振り向くと、握った手を差し出した北山さんと目が合った。
「飲み物買ってきてー。」
「何がいいですか?」
サイドブレーキを引いて、手を出すと、パッと開かれた北山さんの手から五百円玉が私の手のひらに落ちた。
「なんでもいいよ、佐藤ちゃんのオススメで。」
「わかりました。すぐ戻ります。」
また、座席に深く座り直した北山さんと、もう、ほぼほぼ夢の世界に引き込まれてる横尾さんに断って、車の外に出た。
真冬の深夜、冷たい空気が頬を冷やす。
車を運転する為に、コートを脱いでいたことを少し後悔しながら、袖を引っ張って指先を隠した。
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植尾あい(プロフ) - はんちゃんさん» ありがとうございます!チャラみつとの約束が果たされたのか、確かに気になりますよね。何万人といるファンから、主人公ちゃんを見つけることができたのか……書いてみたくなりました!リクエストありがとうございます! (2019年2月12日 20時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
はんちゃん(プロフ) - はじめまして。どれも素敵です!!けど、チャラみつの「夜明けのキセキ」1ページにギュッと詰まってますね、1ページですごく惹き付けられました。上手く言えないけど、すごいですね!このエピソードで、話膨らませて続き読ませて欲しいです! (2019年2月10日 1時) (レス) id: 0785dd2a14 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ひよさん» 意地悪な玉森先輩、初めて書いたのでいじわる加減がわからず……でも、キュンとしてもらえてよかったです!卒業シーズンのソワソワと切なさに、自分でもキュンとしました(笑) 初めてTwitterでのメンバー投票だったのですが、私も楽しかったので、また、やります! (2018年3月9日 15時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - hitomin0921さん» 『好きか嫌いか……』シリーズは、メンバーとの距離感が難しくて、でも、切なくてキュンとするシチュエーションで、書いてる私もドキドキしてます(笑) きっと、横尾くんは、起きていたと思いますよねンフフ 他のメンバーも楽しみにしていて下さいね! (2018年3月8日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - はぁぁぁぁぁ玉森先輩好きです。玉ちゃんに一票投じたものです。幼なじみのお話だけど今の時期のお話で甘酸っぱくてキュンとしちゃいました。ちょっと続きを妄想しちゃいます! (2018年3月8日 22時) (レス) id: a35722cf0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2015年7月16日 22時