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温度《after story of キミ声》4 ページ21

「お風呂、入る?」


冷たい指先を握ったまま聞くと、私の手首を掴まえてニヤリとする。


「いい。Aちゃんであったまるから!」

「え?ちょっ!」


急に引かれた手首に、体勢を崩されて、そのまま毛布の中に引きずり込まれる。


「あったかい!」


ご機嫌なニカのフワフワなパーカーが頬に当たって、擽ったくてもがいていると、まるで、抱き枕にでも抱き着くように、全身で抱きしめられる。


「逃しませんっ!」

「逃げないって、擽ったいの!」

「ごめんごめん。ンフフ」


笑いながら少しだけ身体を離すと、同じだけ温度が離れるから、少しだけ寂しくなって、今度は、自分から擦り寄った。



「……うそ。」



背中に回されたニカの手が、優しいリズムを刻む。

額に触れた唇が「……ん。」って、同意なのか、相槌なのか、小さく囁く。



この小さな部屋の毛布の中。

誰にも邪魔されない時間。

私たちが私たちで、この恋を紡げる。



「ニカ……。」

「……ん?」


少し眠そうに返って来る返事に、顔を上げる。



目の前に、可愛いアヒル口。

伏せられた目の長いまつ毛。


まつ毛に隠れるニカマーク。



「……会いたかったの。」



キミの温度、深夜の空気と疲れきった体が、私の心を素直にする。

背中に触れてた手が、今度は、ゆっくりと髪を撫でて、くるりと指先に絡める。

そのまま抱きしめられて、頬と頬が触れ合うと、まだ、私の方が温かかった。



「オレも……。」



耳元で呟くように言って、もう一度、ギュッと抱きしめられる。

いつも一緒にいられなくても、『会いたい』と思ったタイミングが一緒なだけで、こんなに幸せ。



「……会いたかった。」



そう言ったキミの唇が、頬に触れて、目が合うと照れくさそうに目を細める。

私まで恥ずかしくなって、逸らそうとした顔は、耳のふちをなぞるようなキミの指先に動けなくなって、近づく瞳に、目を閉じた。


柔らかな唇が触れて、私の熱を奪っていく。


「Aちゃん、温かい。」

「お風呂入ってきたしね。」

「……Aちゃんの匂い、落ち着くわ。落ち着く……。」


唇を離して、でも、いつでも触れるくらい近くで話す。


途切れた言葉の先には、何があるの?


まだ、口に出せないその先に、もう一度、柔らかなキスをして、ニカの声がくれる想いを受け取った。



「大好きだよ。」



今は、それだけでいい。



ギュッと抱きしめ返すと、私たちの温度が同じになった気がした。


*END*

ミルクの香り《M》1→←温度《after story of キミ声》3



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植尾あい(プロフ) - はんちゃんさん» ありがとうございます!チャラみつとの約束が果たされたのか、確かに気になりますよね。何万人といるファンから、主人公ちゃんを見つけることができたのか……書いてみたくなりました!リクエストありがとうございます! (2019年2月12日 20時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
はんちゃん(プロフ) - はじめまして。どれも素敵です!!けど、チャラみつの「夜明けのキセキ」1ページにギュッと詰まってますね、1ページですごく惹き付けられました。上手く言えないけど、すごいですね!このエピソードで、話膨らませて続き読ませて欲しいです! (2019年2月10日 1時) (レス) id: 0785dd2a14 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ひよさん» 意地悪な玉森先輩、初めて書いたのでいじわる加減がわからず……でも、キュンとしてもらえてよかったです!卒業シーズンのソワソワと切なさに、自分でもキュンとしました(笑) 初めてTwitterでのメンバー投票だったのですが、私も楽しかったので、また、やります! (2018年3月9日 15時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - hitomin0921さん» 『好きか嫌いか……』シリーズは、メンバーとの距離感が難しくて、でも、切なくてキュンとするシチュエーションで、書いてる私もドキドキしてます(笑) きっと、横尾くんは、起きていたと思いますよねンフフ 他のメンバーも楽しみにしていて下さいね! (2018年3月8日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - はぁぁぁぁぁ玉森先輩好きです。玉ちゃんに一票投じたものです。幼なじみのお話だけど今の時期のお話で甘酸っぱくてキュンとしちゃいました。ちょっと続きを妄想しちゃいます! (2018年3月8日 22時) (レス) id: a35722cf0d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:植尾あい | 作成日時:2015年7月16日 22時

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