花火 1《2》 ページ1
「A、花火やろうぜ！」
いくつになっても子供っぽさを残す幼馴染みの高嗣が、花火を片手に私の部屋の窓の下から大声で誘ってくる。
子供の頃から夏になれば当たり前のように一緒に花火をしていた。
それは、中学生になっても、高校生になっても、来年には、社会に出ていく今も変わらない。
そして、高嗣を想う私の気持ちも、変わることはなかった。
「高嗣と花火してくる。」
リビングでテレビを見ている両親に声をかけると、「あんたたち、いつまでたっても子供ね。」と、笑いながら送り出された。
ビーサンを引っ掻けて、玄関脇に置いてあるバケツを手に取ると、門を開ける。
「バケツよしっ！ろうそくよしっ！」
私の持つバケツを確認して、自分の持ってるろうそくを私に差し出す。それを受けとるとバケツへ放り込んで、高嗣の自転車のカゴにバケツごと入れると、荷台へ後ろ向きに股がった。
「しゅっぱーつ！」
高嗣の掛け声と共にガクンと自転車が揺れて、街灯に照らされた住宅街を抜けていく。
時々触れる背中同士が、湿度の多い夏の空気に汗ばんで、その体温にドキドキする。
花火をするのは、いつもの空き地。
子供の頃から変わらないこの場所で、二人で花火をするようになったのは、いつからだったろう。
高嗣がペットボトルに入れてきた水をバケツに入れると、慣れた手つきでろうそくに火をつけた。
赤、黄、緑……
花火に照らされるその横顔を隣で見る夏は、あと何度巡ってくるだろう。
永遠と思った私たちの時間は、大人になるにつれその意味を変え、自分と高嗣の違いに気づいた頃には、その想いが恋だと知った。
「やっぱり締めは、これだよな。」
そう言って、コンビニの袋から取り出したのは、線香花火。
「高嗣、いっつもすぐに落とすくせに。」
「いいじゃん。」
風に晒されないように、揺れないように、二人並んで小さく肩を寄せる。
線香花火を持つ手を寄せると、高嗣がライターで火をつける。
「ねぇ、高嗣。」
「ん？」
「勝負しよう。……先に落とした方が負け。」
私の提案に大きな口をニイっと結んで、目を細めると、「負けねえからっ！」って、言って、その勢いで線香花火の火が落ちた。
「あ………マジかぁ。」
肩を落とす高嗣を笑って、もう一度線香花火を取り出す。
「次が本番。負けたら、罰ゲームね。」
「絶対、負けねえ！」
負けたばかりの高嗣がそう言って、二人の花火に火をつけた。
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植尾あい(プロフ) - はんちゃんさん» ありがとうございます！チャラみつとの約束が果たされたのか、確かに気になりますよね。何万人といるファンから、主人公ちゃんを見つけることができたのか……書いてみたくなりました！リクエストありがとうございます！ (2019年2月12日 20時) (
レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
はんちゃん(プロフ) - はじめまして。どれも素敵です！！けど、チャラみつの「夜明けのキセキ」1ページにギュッと詰まってますね、1ページですごく惹き付けられました。上手く言えないけど、すごいですね！このエピソードで、話膨らませて続き読ませて欲しいです！ (2019年2月10日 1時) (レス) id: 0785dd2a14 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ひよさん» 意地悪な玉森先輩、初めて書いたのでいじわる加減がわからず……でも、キュンとしてもらえてよかったです！卒業シーズンのソワソワと切なさに、自分でもキュンとしました(笑) 初めてTwitterでのメンバー投票だったのですが、私も楽しかったので、また、やります！ (2018年3月9日 15時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - hitomin0921さん» 『好きか嫌いか……』シリーズは、メンバーとの距離感が難しくて、でも、切なくてキュンとするシチュエーションで、書いてる私もドキドキしてます(笑) きっと、横尾くんは、起きていたと思いますよねﾝﾌﾌ 他のメンバーも楽しみにしていて下さいね！ (2018年3月8日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - はぁぁぁぁぁ玉森先輩好きです。玉ちゃんに一票投じたものです。幼なじみのお話だけど今の時期のお話で甘酸っぱくてキュンとしちゃいました。ちょっと続きを妄想しちゃいます！ (2018年3月8日 22時) (レス) id: a35722cf0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：植尾あい
| 作成日時：2015年7月16日 22時
