シンクとニカの間 ページ9
１人じゃない食事は、久しぶりのことで、その相手がニカであることが嬉しい。
ニカの為に作る食事、ニカの隣で飲むビール、振り向けばそこにある笑顔。
全部が幸せのかたまり。
結局、私は、ニカのパーカーを着たまま食事を済ませ、ニカは、それ以上何も言わなかった。
「あーーー、お腹いっぱい！」
そう言って、長い腕をいっぱいに伸ばしてクッションにもたれ掛かるように伸びをしたニカの脇腹をくすぐるように指先でつつくと『うおっ！やめろっ！』って、ラグの上に転がった。
「ﾝﾌﾌ さて、片付けちゃお。」
転がるニカを無視して、食器を持ってキッチンに入る。
2、3日持つだろうと思って多めに作っておいた筈の鶏肉と大根の煮物の器は、空になっていて、シンクの中に並ぶ、二膳の箸。
ニカのいる、何気ない風景。
カウンター越しにリビングへと視線をむけると、空になった缶をまとめて持って、残りの食器をもう片方の手で持ったニカと目が合った。
「はい。これで、終わり。」
「ありがと。」
差し出される食器を受け取って、スポンジに洗剤をつける。
指の間から溢れ出す泡が、シンクの中の食器へと落ちていく様子をぼんやりと目で追っていると、ビールの空き缶を指定の袋に捨てる為に、ニカがキッチンに入ってきた。
ーーー カラン
重なる缶のぶつかる音。
それから、
フワリと背中から包まれる、ニカの温度。
「ごちそうさま。」
耳元で聞こえるその声に、優しくお腹へと回るその手に、心臓がうるさく反応する。
気づかれたくなくて、泡だらけの手で忙しく食器を洗う振りする。
「うん……。お粗末さまでした。」
至って冷静を装って、振り返らずにそう言うと、
「え？何？どういう意味？」
って、背中から疑問だらけの声がする。
私としては、定型文的な返事のつもりが、ニカの脳内には、存在しなかったやり取りだったみたいで、キョトンとする姿が目に浮かぶ。
「あのね、ニカ……」
食器を洗う手を止めて、子供に説明するみたいに、ニカの方に顔を向けると、目の前に、今にも触れそうな距離のニカの唇。
「ん？」
「……なんでもない。」
ゆっくりとシンクの中へと視線を戻して、スポンジを握り直すと、耳元でニカに笑われた気がした。
ドキドキさせられっぱなし。
お腹に回るニカの手に、少しだけ力が入って、引き寄せられる様に、頬に触れたのは、柔らかなキミの唇。
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りな(プロフ) - こんにちは！昨日この作品を読み始めてハマってしまいもう読み終えてしまいました！あいさんの作品大好きです！もし差し支えなければkis soulのパスワードを教えていただきたいです！20歳のにかみつ担です！ (2020年1月21日 23時) (
レス) id: f006de2d90 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - kanonさん» kanonさん！何度も読み返していただけて感激です！こんな長い作品を夜中に一気読みとは、夜更かしさせてしまいましたね……ニカsideも、何度も読み返したくなる作品になるよう、頑張ります！ (2019年1月7日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
kanon(プロフ) - 何度読み直しても2人の空間にやられます！夜中に一気に読んでぼろぼろ泣いてしまいました。ニカのワンコ力、察知能力、優しさ、言葉…彼らしさがふんだんに盛り込まれてます。ニカサイドと交互に読んであちらの続きもお待ちしてます！ (2018年12月24日 2時) (レス) id: 21ebf13f97 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ナツさん» 読み返してもらえて嬉しいです！ありがとうございます！個人的に北山くんと二階堂くんのやり取りを書くのがとても楽しくて好きなので、ミツ担さんにも好きになってもらえて感激です！北山くんと彼女もいつか書けたらなぁと思ってます！ (2018年8月4日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ナツ(プロフ) - 初めましてのコメント失礼致します。本当に本当に大好きな作品で事あるごとに読み返してます！あれ？私、ミツ担のはずでは！？と自分でも整理できない感情はどこへ向ければいいのでしょうか？笑個人的にはミツの彼女さんとの馴れ初めも気になります♪ (2018年8月3日 8時) (レス) id: 8a0cb53120 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：植尾あい
| 作成日時：2016年6月24日 7時
