キミとの朝 ページ23
ニカの呼吸と鼓動を感じながら、夜から朝に向かう静寂の中、ニカの隣で眠る。
時々聞こえる鼻をすする音。
寝返りを打とうとして、離れそうになる私を引き寄せる腕。
擦り寄る頬。
眠たいのに、眠れなくて、寝たいのに、寝たくない。矛盾だらけの幸せな悩みに、どうしたらいいかわからない。
ニカと毛布に包まれて、ゆっくりと目を閉じれば、トクトクと優しいニカの鼓動に、夢の中へ連れ去られていった。
・・・・・
「…………ちゃん。」
遠くから聞こえる、声。
「……、Aちゃん。」
私の名前を呼ぶ。キミの声。
「……ん、ん?」
ゆっくりと目を開けると、濡れた髪のニカがベッドに座って、タオルで髪を拭きながら、私のことを見下ろしていた。
「えっ?あれ?」
慌てる私に、目を細めて、眩しそうに笑うニカの頬を、カーテンの隙間から、まだ、ぼんやりとする朝日が照らした。
「おはよ。」
私が言いたかった台詞は、ニカに先を越されて、寝ぼけた頭で『おはよう』を返した。
「お風呂、勝手に入ったから。」
「……うん。」
シャンプーの匂いが私たちを包んで、ニカの周りの湿度が高い。
「それから、勝手にクローゼットから、オレの服探したから。」
「……あ、うん。洗濯しておいた。」
「うん。ありがとう。Aちゃんの匂いがする。フフッ」
少しずつ目覚めていく頭で答えながら、体を起こすと、まだ、ニカのパーカーに包まれていることに、気がつく。
「あ……ごめん。パーカー……」
「いいよ。Aちゃんが着てて。」
「うん。」
長い袖に指先を隠すように、引っ張りながら、ニカへ視線を向けると、悪ガキの表情をしたニヤケ顔。
「え……何?」
嫌な予感しかしなくて、露骨に眉をひそめると、笑いを堪えるようにニカが言った。
「クローゼット開けたら、ヨレッヨレのTシャツが落ちてきたよ。ンフフ」
…………あ、あぁ。
思い出すのは、甘い夜よりも、慌ててダッサイTシャツをクローゼットに投げ込む自分。
「…………見なかったことにして。」
「はいはい。フフッ」
絶対に、この先、いつまでもネタにされそうな返事が返ってきて、ため息が出る。
笑いながら立ち上がったニカが、スマホを手にして何かを確認すると、小さくフッと息を吐いて言った。
「もう、行かなきゃ。」
その一言は、私には、止められない言葉。
でも、
もう、
不安になんてならない。
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りな(プロフ) - こんにちは!昨日この作品を読み始めてハマってしまいもう読み終えてしまいました!あいさんの作品大好きです!もし差し支えなければkis soulのパスワードを教えていただきたいです!20歳のにかみつ担です! (2020年1月21日 23時) (レス) id: f006de2d90 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - kanonさん» kanonさん!何度も読み返していただけて感激です!こんな長い作品を夜中に一気読みとは、夜更かしさせてしまいましたね……ニカsideも、何度も読み返したくなる作品になるよう、頑張ります! (2019年1月7日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
kanon(プロフ) - 何度読み直しても2人の空間にやられます!夜中に一気に読んでぼろぼろ泣いてしまいました。ニカのワンコ力、察知能力、優しさ、言葉…彼らしさがふんだんに盛り込まれてます。ニカサイドと交互に読んであちらの続きもお待ちしてます! (2018年12月24日 2時) (レス) id: 21ebf13f97 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ナツさん» 読み返してもらえて嬉しいです!ありがとうございます!個人的に北山くんと二階堂くんのやり取りを書くのがとても楽しくて好きなので、ミツ担さんにも好きになってもらえて感激です!北山くんと彼女もいつか書けたらなぁと思ってます! (2018年8月4日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ナツ(プロフ) - 初めましてのコメント失礼致します。本当に本当に大好きな作品で事あるごとに読み返してます!あれ?私、ミツ担のはずでは!?と自分でも整理できない感情はどこへ向ければいいのでしょうか?笑個人的にはミツの彼女さんとの馴れ初めも気になります♪ (2018年8月3日 8時) (レス) id: 8a0cb53120 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2016年6月24日 7時