ソーダ・キス ページ2
「ンフフ 何?照れてんの?」
目の前で、ニカがからかうように笑う。
「うるさいっ。」
ニヤニヤしてるニカの口を、手のひらで覆うようにして、黙らせる。
私のことをからかってるくせに、自分だって絶対に照れてる。
わざと不機嫌な顔で睨んでみると、私の手首を掴んで生意気なアヒル口から引き剥がす。
「息できないだろっ。」
「これくらい平気でしょ?」
「できないっ!」
お互い、なんだか、恥ずかしくて、いつもの距離に戻っていく。
居心地のいい、私たちの距離。
絡まるような甘さよりも、少し賑やかで、弾けるソーダみたい。
肩を抱いて歩くよりも、手を繋いで一緒に駆け出すような。
そんな、私たちの距離。
頬に触れていたニカの手が、撫でるみたいに耳に触れ、そのまま、首の後ろに回される。
照れたニカが、無理やり照れを隠して、唇の端に照れ笑いを残したまま言った。
「キスできないだろっ!」
「なっ……」
言い返してやりたかったのに、私の言葉は、ニカの唇に飲み込まれて、それ以上、何も言えなくなった。
でも、きっと、言い返す言葉なんて、見つからなかった。
1度離れた唇は、一瞬の息継ぎしか許さなくて、また、すぐに触れて、小さなキスをくり返す。
いつもの私たちもいいけど、時々なら、こんな甘い空気も嫌じゃない。
ニカのパーカーと同じ匂いが、辺りの空気を包みこむ。
好きだよ。
言葉にしなくても、伝わる気持ち。
身を乗り出すように体を寄せるニカに、ゆっくりとソファーに押し倒されると、ソファーの端からコンビニの袋が転がり落ちて、ペットボトルが床に転がる音がした。
「あっ……。」
思わずそれに反応して、行方を視線で追う。
「Aちゃん。こっち見て。」
「あ、だって……。」
ニカの手が私の顔を自分へと向ける。
そして、腕を伸ばして、転がるペットボトルを拾い上げて床に立てた。
「これで、いい?」
「うん。ありが……と。」
せっかくの雰囲気をぶち壊した私に、少し呆れたニカの声。
小さな深呼吸みたいに息を吐いて、それから、私の目を見て話し始めた。
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りな(プロフ) - こんにちは!昨日この作品を読み始めてハマってしまいもう読み終えてしまいました!あいさんの作品大好きです!もし差し支えなければkis soulのパスワードを教えていただきたいです!20歳のにかみつ担です! (2020年1月21日 23時) (レス) id: f006de2d90 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - kanonさん» kanonさん!何度も読み返していただけて感激です!こんな長い作品を夜中に一気読みとは、夜更かしさせてしまいましたね……ニカsideも、何度も読み返したくなる作品になるよう、頑張ります! (2019年1月7日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
kanon(プロフ) - 何度読み直しても2人の空間にやられます!夜中に一気に読んでぼろぼろ泣いてしまいました。ニカのワンコ力、察知能力、優しさ、言葉…彼らしさがふんだんに盛り込まれてます。ニカサイドと交互に読んであちらの続きもお待ちしてます! (2018年12月24日 2時) (レス) id: 21ebf13f97 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ナツさん» 読み返してもらえて嬉しいです!ありがとうございます!個人的に北山くんと二階堂くんのやり取りを書くのがとても楽しくて好きなので、ミツ担さんにも好きになってもらえて感激です!北山くんと彼女もいつか書けたらなぁと思ってます! (2018年8月4日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ナツ(プロフ) - 初めましてのコメント失礼致します。本当に本当に大好きな作品で事あるごとに読み返してます!あれ?私、ミツ担のはずでは!?と自分でも整理できない感情はどこへ向ければいいのでしょうか?笑個人的にはミツの彼女さんとの馴れ初めも気になります♪ (2018年8月3日 8時) (レス) id: 8a0cb53120 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2016年6月24日 7時