涙スイッチ ページ10
自転車のカゴで揺れる袋を見て、こんなに大きなCDショップの袋を手にするのは、きっと、もう、一生ないだろうなと思う。
レジで店員さんが「大人買いですね。」なんて言いながら、次々とバーコードを読み込んでいくのを曖昧な顔でかわす自分を思い出して、可笑しかった。
袋の中には、手当たり次第に購入したCDとDVDがギッシリ。
自転車が揺れる度にぶつかり合う袋の中身を手で押さえた。
このCDやDVDは、ニカが大切にしている仕事の結果だから、私も大切にしたいと思った。
どんなに遅くなろうと、どんなに疲れていようと、どんなに後ろ髪引かれようと、仕事を休んだりしないニカの努力の結晶。
そう思うだけで、全部が私にとってこの上なく愛しかった。
途中、本屋に寄って、表紙にKis-My-Ft2の文字がある雑誌も全部買った。
私の手元に、ニカの仕事の成果が増えていくにつれ、その重みがのし掛かる。
もう、ニカの存在が、ひどく遠いものになってしまった気がした。
・・・・・
マンションの駐輪場に自転車を止め、両手に袋をぶら下げて自分の部屋へ向かう。
真紀、怒ってるかな………。
ニカに、連絡してくれたかな……。
深呼吸をして、なんとか気持ちを持ち上げて、ポケットから取り出した鍵を差し込む。
「ただいま。」
部屋の奥へ声をかけると、リビングのドアがゆっくり開いて真紀の顔が遠慮がちに覗いた。
「……… おかえりなさい。」
そう言って、私を迎える声は安堵まじりの小さな声で、その目は、少しだけ赤かった。
スニーカーを脱いで、リビングへ向かおうとすると、急に両手の袋が重くなったように感じて、動けなくなる。
「………A？」
「ごめん。…………大丈夫。」
両手にぶら下がる袋に視線を向けた真紀が、大股で近づいたかと思うと、それらを全部取り上げた。
そして、振り向きもしないで、そのまま、リビングへと消えていった。
急に軽くなった両手に、動き出した足でその後を追いかけると、春仕様に替えたラグと、いつもと違うローテーブルが、まるで他人の家のようだった。
「こんなに………、
こんなにたくさん、一人で持とうとするから………。」
ラグの上にドサリと袋を置いた真紀が振り返る。
「動けなくなるんだよっ！」
真紀の目から、また、涙が落ちる。
「Aもっ！………ニカもっ！」
真紀の言葉が、私の涙のスイッチを押した。
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植尾あい(プロフ) - 千明さん» ｉｆ聞きながら？！私、自分の書いた妄想のくせに、それやると悲しくて涙ぐむんですよ……どうかしてる。祈りも最近やばいです。シーンタイトルにしちゃいました……切なくて苦しい展開ですが、この先の二人信じて見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (
レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ゆうさん» お久しぶりです！もう、ウタゲ終わってキスブサもおやすみで、本当にニカ不足(・_・、) あ、でも、プレバトは、可愛かった！お話の方は、切ない展開ですが、リアル二階堂くんに癒やされながらがんばります！ (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - 由夏さん» ありがとう(ノД`)でも、ちょっと切なすぎる展開。二人が強く心を繋いでいてくれると信じて、書き続けます。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - amiさん» お久しぶりです(*´∀`*)ノamiさん。切ないけれど、お互いを求め、思いやる気持ちが伝わっていたら嬉しいです。思いやるあまりに少しずつズレてしまった思いが、この先、どうなっていくのか見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - chizuruさん» 秋の夜長のお供になれたでしょうか？こんな切ないシーンお供にしてもいいのかなぁ。でも、そう言ってもらえて嬉しい。そして、どこか当てはまる歌詞が切なさの中に温かさを感じさせてくれる。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：植尾あい
| 作成日時：2015年7月23日 7時
