リードの向こう ページ8
「真紀………。
私、………確かめなきゃ。ごめん。」
私を一人にしないようにと、必死で掴む真紀の手を半ばで振り払うようにしてすり抜ける。
「待って！」
「すぐに、戻ってくるから。部屋でまってて。」
手にしていた部屋の鍵をパーカーのポケットへ戻すと、引き留めようとする真紀に向かって言った。
「Aっ！」
「………大丈夫だから。」
今の私ができる最大限のこと。
平気だよって
真紀のこと、責めたりしないよって
ニカのことだって
責めたりしないし
恨んだりもしないよって
笑った
真紀の表情が、途端に歪んで、大きな瞳から涙が零れた。
真紀、ごめんね。
今の私には、できる自信がないから、少しだけ手伝って？
大粒の涙を溢す真紀から、数歩離れて振り返る。
「ひとつだけ、お願い。」
足を止めずに、ゆっくりとニカの部屋の前を通りすぎる。
今、この部屋に居ないことは、わかってる。
私の前にいる時以外は、ニカは、私のものなんかじゃなくて、あの無数に輝く小さな光全てのものだから。
− 早く ニカに会いたい
そんな台詞、言ってはいけなかった。
「ニカに………ニカに、連絡してくれる？
今日のすき焼き、中止になったって。」
キミの全てを手に入れたいだなんて、願ってはいけない思いだった。
知らなくてごめんなさい。
困らせてごめんなさい。
「中止の理由は………、お腹壊したとか言っておいて。」
笑ったつもりの私の声は、からからに乾いた溜め息みたいな音がして、きっと、真紀には聞こえなかった。
「ダメだよっ！Aっ！」
真紀の涙声が追いかけてきたけど、その声に追い付かれないようにと走った。
エレベーターを待つこともできない程に、落ち着かない鼓動をグッと両手で押さえて、階段を駆け下りた。
思い出したくないのに、私の前で笑うニカの笑顔ばかりが浮かんで、視界がぼやける。
あの夜、聞いてしまったニカの思いが、不安げなニカの決意が、その意味を形作っていく。
手放したくなんてない。
でも、
今、私の手にあるリードの向こうは、
ニカに繋がっていないでしょ？
駆け下りた階段の先、エントランスを抜けると、傾き始めた太陽が影を伸ばしていた。
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植尾あい(プロフ) - 千明さん» ｉｆ聞きながら？！私、自分の書いた妄想のくせに、それやると悲しくて涙ぐむんですよ……どうかしてる。祈りも最近やばいです。シーンタイトルにしちゃいました……切なくて苦しい展開ですが、この先の二人信じて見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (
レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ゆうさん» お久しぶりです！もう、ウタゲ終わってキスブサもおやすみで、本当にニカ不足(・_・、) あ、でも、プレバトは、可愛かった！お話の方は、切ない展開ですが、リアル二階堂くんに癒やされながらがんばります！ (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - 由夏さん» ありがとう(ノД`)でも、ちょっと切なすぎる展開。二人が強く心を繋いでいてくれると信じて、書き続けます。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - amiさん» お久しぶりです(*´∀`*)ノamiさん。切ないけれど、お互いを求め、思いやる気持ちが伝わっていたら嬉しいです。思いやるあまりに少しずつズレてしまった思いが、この先、どうなっていくのか見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - chizuruさん» 秋の夜長のお供になれたでしょうか？こんな切ないシーンお供にしてもいいのかなぁ。でも、そう言ってもらえて嬉しい。そして、どこか当てはまる歌詞が切なさの中に温かさを感じさせてくれる。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：植尾あい
| 作成日時：2015年7月23日 7時
