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時を進める ページ35

口づけたニカからほんのりと甘いプリンの香りがして、そっと唇を離して笑った。



「ニカ、プリンの味がする。」


「……あ、Aちゃんがシャワーしてる間に、食べたから。」



そう言ったニカがほんの少し照れたように、手の甲で唇を押さえた。

その姿が、何だか初めてキスをした男の子みたいに可愛くて、思わずニカの前髪を優しく撫でる。

私の行動に不服そうなニカが唇を舐めて、「Aちゃんも残ってるよ。」って、ローテーブルを指さす。



「食べちゃお。」



ニカに背を向けて、プリンに手を伸ばすと、背中からニカの両腕がふわりとお腹へと回ってくる。


柔らかく、しなやかに。


温かく、優しく。



「冷たくなくてもおいしいって、さすが。」



お腹に回る腕を意識しない振りをして、残ったプリンを食べきる。

その間、ニカは、お腹に回された左右の指先をつけたり、離したりを繰り返すだけで、何も言わなかった。



「ニカ?疲れてる?眠いの?」



何も言わず、動きもしないニカが心配になって振り向くと、にいっと笑ったニカが「全然!」って言った。

その笑顔はニカじゃなくて、二階堂くんの笑顔で、私が無理させているのかもと、切なくなる。



「歯磨き、しよ?」



ニカの手を取って、時を進める提案をする。


この夜を進めてしまうのが怖くて、朝が来ることが怖くて、でも、その先の明日に光を求めて立ち上がる。


キミの手は、いつだってその温もりをくれるから。


キュッと掴んで、キミのことを引っ張り上げた。



「Aちゃん、眠いの?」



ニカの質問に、素直な気持ちで答える。

きっと、それがニカを安心させてあげられるベストの方法だから。



「せっかく、久しぶりに会えたんだよ?」


「そうだね。」



私に引っ張られて立ち上がるニカが、すぐ目の前で二階堂くんからニカに戻っていく。



「歯磨きしてから、のんびりしよう。」



容赦なく私たちを朝へと進める時間を無駄にしたくなくて、少しでも2人の記憶を増やしたくて、ニカを見つめた。



「ンフフッ のんびり、何するの?」



意地悪に笑ったニカが、ニカらしく意地悪を言うから、その手を離して軽く睨む。



「もうっ!」



その表情がニカらしくて、それが私の好きな私達だって、再認識する。


怒った振りは、すぐにバレて、今度は、私の手がニカに捕まる。



「歯磨きしよっか!」



そう言ったニカの声に、その手を握り返した。

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植尾あい(プロフ) - 千明さん» if聞きながら?!私、自分の書いた妄想のくせに、それやると悲しくて涙ぐむんですよ……どうかしてる。祈りも最近やばいです。シーンタイトルにしちゃいました……切なくて苦しい展開ですが、この先の二人信じて見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ゆうさん» お久しぶりです!もう、ウタゲ終わってキスブサもおやすみで、本当にニカ不足(・_・、) あ、でも、プレバトは、可愛かった!お話の方は、切ない展開ですが、リアル二階堂くんに癒やされながらがんばります! (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - 由夏さん» ありがとう(ノД`)でも、ちょっと切なすぎる展開。二人が強く心を繋いでいてくれると信じて、書き続けます。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - amiさん» お久しぶりです(*´∀`*)ノamiさん。切ないけれど、お互いを求め、思いやる気持ちが伝わっていたら嬉しいです。思いやるあまりに少しずつズレてしまった思いが、この先、どうなっていくのか見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - chizuruさん» 秋の夜長のお供になれたでしょうか?こんな切ないシーンお供にしてもいいのかなぁ。でも、そう言ってもらえて嬉しい。そして、どこか当てはまる歌詞が切なさの中に温かさを感じさせてくれる。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:植尾あい | 作成日時:2015年7月23日 7時

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