言葉に出来ない ページ33
小さくて可愛いなんて、言われたことのない私の手を、軽々と包むニカの手のぬくもり。
そっと、手の甲を撫でる長くてなめらかに反る親指。
今、この瞬間は、私のものなのに、どうしてこんなにも切ないんだろう。
「……ニカを好きってだけじゃ、ダメなの？」
目を合わせない私の言葉に、鼻で笑ったニカが呆れたように言う。
「Aちゃん、好きなのは、大前提だからね。好きだから一緒にいたいんでしょ？」
素直で真っ直ぐなニカの言葉に、胸の奥が軋む。
一緒にいたい。
一緒にいられるなら、それ以上は、何も望まない。
でも、ニカが、二階堂高嗣くんでいられなくなるような、そんな存在になるくらいなら、静かにゆっくりとキミの中から、消えてしまいたい。
「ねぇ、Aちゃん………。」
ニカの掠れた声が、懇願する。
「ずっと、一緒にいたいって、………言ってよ。」
自信なさげな、その声に、私は、答えるしかなくなる。
「ずっと………一緒に、……いたいよ。」
できることなら。
ずっと、今までみたいに、一緒にいたいよ。
でも………
その先の言葉は、胸の奥へと飲み込んで、ゆっくりと顔を上げて、ニカの目を見る。
真っ黒な瞳が私を見つめて。
私だけを映して、揺れていた。
「ニ……カっ。」
手を伸ばして、ニカを抱きしめた。
ただ、ギュッと。
何も言えない代わりに、私の鼓動を、私の感触を、私の温度を、覚えていて欲しくて。
膝を抱えるニカの長い足を割って入るように、揺れる瞳を胸に抱いた。
広いと思っていた肩が、小さく震えて、長い腕が頼りなげに私の背中に回る。
言葉に出来ない寂しさと、
言葉に出来ないワガママを、
私たちは、知っている。
だから、ただ、今だけ、互いの存在が一番近くにあるって感じたくて、抱きしめ合うんだ。
「ニカ………、ねぇ、朝が来るまで、一緒にいてくれるんだよね？」
抱きしめるニカの耳元に唇を寄せる。
「こんな日に………こんな夜に、一人にしないで。」
弱音。
強がりな私の可愛くない本音。
「うん………。
オレは、Aちゃんから、離れたりしない。
ひとりになんて、………させない。」
ニカの言葉を信じて。
ニカだけを見ていることができるなら。
幸せなんだと思う。
どうして、私は、もっと、自分にワガママになれないんだろう。
ニカの髪から香るシャンプーが今日という日を脳裏に焼き付けた。
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植尾あい(プロフ) - 千明さん» ｉｆ聞きながら？！私、自分の書いた妄想のくせに、それやると悲しくて涙ぐむんですよ……どうかしてる。祈りも最近やばいです。シーンタイトルにしちゃいました……切なくて苦しい展開ですが、この先の二人信じて見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (
レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ゆうさん» お久しぶりです！もう、ウタゲ終わってキスブサもおやすみで、本当にニカ不足(・_・、) あ、でも、プレバトは、可愛かった！お話の方は、切ない展開ですが、リアル二階堂くんに癒やされながらがんばります！ (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - 由夏さん» ありがとう(ノД`)でも、ちょっと切なすぎる展開。二人が強く心を繋いでいてくれると信じて、書き続けます。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - amiさん» お久しぶりです(*´∀`*)ノamiさん。切ないけれど、お互いを求め、思いやる気持ちが伝わっていたら嬉しいです。思いやるあまりに少しずつズレてしまった思いが、この先、どうなっていくのか見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - chizuruさん» 秋の夜長のお供になれたでしょうか？こんな切ないシーンお供にしてもいいのかなぁ。でも、そう言ってもらえて嬉しい。そして、どこか当てはまる歌詞が切なさの中に温かさを感じさせてくれる。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：植尾あい
| 作成日時：2015年7月23日 7時
