泣きぼくろ ページ23
離したくない。
口に出してしまったら、その思いは、完全に私の中を支配して、ニカの背中に回した手にギュッと力が入ってしまう。
その感覚はニカへと伝染して、私の体は、ニカの腕から逃れられなくなる。
こぼれ落ちそうになる涙を、見られないように、こぼさないようにと、数回瞬きをすると、耐えられずにこぼれた涙が数粒、ニカの肩へと吸い込まれていった。
気づかれないように、これ以上零れないようにと、唇を噛むと、ニカの手が髪に触れ、慰めるように優しく撫でた。
「Aちゃんは、色々と考えすぎなんだよ。」
ニカの危機感のない言葉。
でも、それは、私の知ってるニカらしくて、どこか安心してしまう。
「ニカは、考えなさすぎなんだよ。」
これが、私たちの空気。
これが、私たちの関係。
「だって、考えたってどうしようもないこともあるでしょ？」
ニカの声は、少しだけ諦めの音が混ざっていて、でも、その向こうに、強い意志が隠れているのがわかった。
「オレは、この仕事を辞められないし。
Aちゃんから離れる気も、手放す気もない。
ほら、どうしようもないじゃん。ﾌﾌｯ」
私の不安と決意のすべてを、ニカは、小さな笑いを含めて、さらりと言いのけてしまう。
臆病な私がいつだって救われて、憧れるニカの得意技。
「Aちゃんを好きだって気持ちも、どうしようもない………。」
ニカの声で呼ばれる私の名前も、『好き』って言葉も、いつまでだって聞いていたい。
この先、何度だって聞けると思ってた。
この先、何度だって。
私が『言って』って言えば、ニカの気持ち全部で『Aちゃん、好きだよ』って、言ってくれると思ってた。
ニカの肩に頬を擦りつけて、ニカの声と言葉を胸の奥へと刻みつける。
いつでも、思い出せるように。
「それに、Aちゃんだって、オレが好きでしょ？」
不意に離された体に、ニカの顔を見つめると、目の前で視線がぶつかって、ひそめられた眉と、真っ直ぐなまなざしが私を離してはくれない。
下唇を噛んで、瞬きをしたニカの右目の縁のニカマーク。
『泣きぼくろ』
誰がそんな風に名づけたの？
「オレのこと、諦めるの？」
私の言葉を待ってるニカが、泣いてるみたいに見えるのは、泣きぼくろのせいだよね。
「ニカが、………好きだよ。」
背中から解いた手で、優しくニカの右目の縁をなぞった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 847人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
植尾あい(プロフ) - 千明さん» ｉｆ聞きながら？！私、自分の書いた妄想のくせに、それやると悲しくて涙ぐむんですよ……どうかしてる。祈りも最近やばいです。シーンタイトルにしちゃいました……切なくて苦しい展開ですが、この先の二人信じて見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (
レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ゆうさん» お久しぶりです！もう、ウタゲ終わってキスブサもおやすみで、本当にニカ不足(・_・、) あ、でも、プレバトは、可愛かった！お話の方は、切ない展開ですが、リアル二階堂くんに癒やされながらがんばります！ (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - 由夏さん» ありがとう(ノД`)でも、ちょっと切なすぎる展開。二人が強く心を繋いでいてくれると信じて、書き続けます。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - amiさん» お久しぶりです(*´∀`*)ノamiさん。切ないけれど、お互いを求め、思いやる気持ちが伝わっていたら嬉しいです。思いやるあまりに少しずつズレてしまった思いが、この先、どうなっていくのか見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - chizuruさん» 秋の夜長のお供になれたでしょうか？こんな切ないシーンお供にしてもいいのかなぁ。でも、そう言ってもらえて嬉しい。そして、どこか当てはまる歌詞が切なさの中に温かさを感じさせてくれる。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：植尾あい
| 作成日時：2015年7月23日 7時
