自分へのミッション ページ8
思いもよらず『あの日』を蘇らせてしまったせいか、一人の部屋に帰るのは、少し辛かった。
用もないのにコンビニに寄り道して、お腹は満たされてるはずなのに、ちょっと高めのアイスクリームを買った。
「溶けないうちに帰ろう……。」
自分に課せるタイムリミット。
そうでもしないと、今日は、帰る気になれなかった。
自分の部屋の手前、隣のドアの前を通りすぎる時、微かにニカの匂いがした。
時間は、21時を過ぎている。
帰ってきたのかもしれないし、出かけていったのかもしれない。
両極端な可能性を考えながら、自分の部屋に入ると鍵をかけた。
手にしたアイスクリームが溶けていないのを確認する。
ミッション成功。
「よかった……。」
そして、改めて目にする紙袋。
その中に収まる手袋は、ニカの存在を主張し弱った私をさらに弱くする。
紙袋を手に取ると、私は迷わず、それを寝室のクローゼットへしまった。
リビングへ戻るとスプーンを用意して、アイスクリームのふたを開ける。
バニラの甘い香りが広がった。
「おいしい……。」
一口食べると口の中から、鼻の奥へ冷たさ伝わっていく。
自分の声しかしない。
自分の呼吸しかない。
この部屋は、まるで、自分を閉じ込める箱。
『あの日』が来なければ、
会えない日が続かなければ、
彼との新しい生活が待っていたはずの部屋。
引っ越さず、住み続けているのは、
同じ過ちをおかさないよう、
一人で生きていけるよう、
自分に課した、
最悪のミッション。
次の一口を口に入れた瞬間。
――― ピンポーン
今の私の部屋には、不釣り合いな音が響いた。
立ち上がり、インターフォンの画面を見ると、エントランスの画像はなく、小さな『玄関』の文字が点灯していた。
「はい。」
夜の訪問者に警戒した声で応答する。
一人暮らしで身に付けた知恵。
「………… オレ。」
私の警戒した声に驚いたのか、少しの間があってから、聞こえた声。
聞きたかった、
でも、
聞けなかった、
少しかすれた、
優しい声。
「…… ニカだよ。」
その声を聞いただけで、
私の心は、
また、揺らぐ。
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植尾あい(プロフ) - ちいさん» 生き甲斐だなんてっ!感激です。『欲張り』のあのシーンは、書き始めた時から、絶対に書く!と、決まってたシーンなので気に入って貰えて嬉しいです!仔犬感と大人感のバランス、うまくとりながら、日々、妄想に励みますっ(笑) (2015年3月2日 11時) (レス) id: dd156b7728 (このIDを非表示/違反報告)
ちい(プロフ) - 作者様の作品を読むのが最近わたしの生き甲斐レベルです( ; ; )もう仔犬なのか立派な男なのかわからない魅力的すぎる隣人ニカちゃんに毎日萌えています//私も欲張りのあのシーンたまらなく好きです!溢れ出す妄想、これからも楽しみに読ませていただきますね! (2015年3月2日 2時) (レス) id: 7ce2ec877c (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - aiMyuさん» 通勤のお供になれて光栄です!私的に朝が都合よくて、朝更新してますが…そうですか、不審者(笑)これは、大人な展開は、避けた方がよさそうですね。朝からねぇフフッ。帰宅後に読み返して貰えるなんて!ありがとう。これからもよろしくお願いします! (2015年2月26日 20時) (レス) id: dd156b7728 (このIDを非表示/違反報告)
aiMyu(プロフ) - コメ返しwwあの、あいさんて朝更新してるじゃないですか?私、通勤中に読むんですよね。毎朝、電車内でフゥーって息吐きながら、ニヤニヤしちゃって…私、完全に不審者ですwwそして帰宅してから読み返す♪♪本当に尊敬してます☆ (2015年2月26日 15時) (レス) id: 81939e753e (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - キスマイさん» ハイハイ♪いらっしゃーい(笑)自分でももどかしくなりながら書いてます。でも、皆さんにキュンしてもらえて頑張れます!仕事バラしはねぇ……ウフフ…お楽しみに♪いつでもお喋りしに来て下さいね♪お待ちしてまーす。 (2015年2月26日 8時) (レス) id: dd156b7728 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2015年1月19日 8時