キミのその手を その声を 【2】

往復する紙袋 ページ24

クリスマスといえども、仕事には、全く影響はなく、いつものように軽いトラブルを含め、慌ただしい一日が過ぎていく。

プレゼントを受け取ったニカから、何らかのメッセージがあるかもしれないと淡い期待を抱いたりしたけれど、私のスマホが震えることはなかった。



そして、デスクに空きが増え始めた19時過ぎ。

まだ、残業中のオジサマ方に挨拶をして、一足先に帰路についた。


軽く夕飯の食材を買おうと駅前のスーパーに寄ると、明らかに売れ残りのクリスマスケーキが寂しく並んでいた。



「……… 買ってあげるよ。」



何故かその光景が自分と重なって、直径10センチほどのカップルをターゲットとしたであろう可愛いケーキを買い物かごへ入れた。


29歳、独身、バリッバリのOL。


売れ残りは、目前。



「ヤバイな。」



買い物かごのケーキを見つめて呟いた。





マンションに着いてエレベーターに乗り込むと、本日何度目か数えられないほどのスマホチェックをする。



「あっ！来たっ！」



lineの新着メッセージを知らせるマークに慌てて画面を開けば、それは、妹からの業務連絡。


― 年末年始、いつ帰ってくるの？


私の予定を気にしてくれるのは、結局、家族くらい……。


項垂れながらエレベーターを降りて、通路を進むと、私の部屋のドアノブに見覚えのある紙袋。



自然と早足になって近づくと、


それは、紛れもなく、


昨日の夜、


私がニカに届けた紙袋だった。




「…… 返されたってこと？」




ギュッと苦しくなる胸。



ニカの部屋からは、何の気配も感じない。




ひどく落ち込み、力ない手で紙袋に手をかけると、ズシッと重さを感じる。



「えっ？」



紙袋の中を覗き込むと、そこには、数本の缶ビールがお行儀よく並んでいた。


落ち込んだ気持ちは、一気に急上昇すると、鍵を開けて部屋の中へ駆け込んだ。

コートを脱ぐのも忘れて、テーブルにスーパーの袋を置くと、紙袋の中をもう一度覗き込んだ。



すると、さっきは、気づかなかった紙切れ。



そっと取り出して開くと、そこには、ニカの文字が並んでいた。



―・―・―・―・―

よいこのAちゃんへ


次の鍋の時まで、冷やしておいてね。


ニカサンタより

―・―・―・―・―



紙袋から缶ビールを取り出すと、一本ずつ



ニカ専用


A専用



と、あの日、私がしたように書かれていた。

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