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ジント「バンビ…。Aちゃん、遅いね…」
バンビも心配そうに、キューンと細い声をあげていた。
だけど、今日は何やら用事がありそうな感じだったし、それで遅くなっているのかも。
でも、もしも何か事故に巻き込まれていたら？
もしも事件に巻き込まれていたら？
テレビのニュースでも、最近このあたりで物騒な事件が増えているし、可能性はゼロじゃない。
いらぬ不安が頭をよぎり、いてもたってもいられなくなってくる。
ジント「ごめんバンビ。ちょっと留守番しといてくれる？」
どこ行くのって感じの顔で、玄関へ向かう俺のあとをついてくるバンビ。
ジント「ちょっと、Aちゃんのこと探してくるね」
そして俺は、バンビを残して初めて一人でこの家を出て行った。
―
近所を一周しても、Aちゃんを見つけることはできない。
この近辺にいるかどうかもわからないのに、俺はそれでも必死にAちゃんを探して暗い夜道を走り抜けた。
なぜだろう。
俺は、今すぐ、Aちゃんに会いたい…。
いつも、あんなに近くにいてくれるのに、今は、とっても遠いところにいる気がする。
俺は汗だくになりながらも走っていると、曲がり角の向こうで誰かが立っているのが見えた。
走るのをやめて、俺はそっとその曲がり角の物陰からその様子を窺った。
しかし、その光景に俺は言葉を失ってしまった。
それは、知らない男と、Aちゃんが口づけを交わしている瞬間だったのだ。
見てはいけない、いや、見たくない光景だった。
なんだ…。
なんだか体中が熱い。
走ったからじゃない。
もっと別の、何か体の奥底から得体のしれない何かがわきあがるような感覚だった。
これ以上ここにいてあれを見てたら、俺はきっとどうなるか分からない。
その前に早くここを離れなきゃ…。
そう思って俺は頭を抱えながらその場を後にした。
何だろう。
なんだか、このままあの家にも帰りたくない。
この気持ち、何だ。
俺、どうしちゃったんだ。
なんだか俺が俺じゃなくなってくような感じ。
真っ黒な感情が、俺の心の奥底で、全部をぐちゃぐちゃにかき回していくような、そんな感覚。
そして、心がどんどんどんどん痛みを増して、ズタズタに引き裂かれるような、バラバラに引き千切られるような、そんな感覚だった。
あぁ…なんだか…俺が…壊れてくみたいだ…
俺は真っ暗な空を見上げながら、そう思った。
―
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milkssss(プロフ) - ひぃさん» コメントありがとうございます！最後までお付き合いいただけると、嬉しいです！ (2020年2月25日 21時) (
レス) id: 81ca320fbb (このIDを非表示/違反報告)
ひぃ(プロフ) - 続き楽しみにしてます！ (2020年2月25日 2時) (レス) id: f0de405ab0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：milkssss | 作成日時：2020年2月19日 15時
