愛と合図【M!LK】 ① (ページ5)

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頭に包帯を巻いて、ベッドの上でその人は膝を曲げて、体育座りをしていた。
顔を膝の部分にうずめて、怯えた顔をしているのが印象的だ。
まぁ、無理もないか。

一体、自分が何者で、自分の置かれている状態が全く分からないのって、どんな気分なんだろう。

そりゃ、怖いよね…。

彼の顔を見ていると、なんだか胸が締め付けられていくようだ。
可哀想…。

すると、彼は私に気が付いたのか、顔を少しだけ動かして、こっちを見つめてきた。
上目遣いで、潤んだ瞳をこちらに向けてくる。

か、可愛い…。
何て言ってる場合じゃない！
とにかく、何かしゃべらないと…。

「け、怪我…。大したことなくて良かったですね！」

と、当たり障りのない言葉で様子を見よう。

「……」

でも、彼は何も答えずに膝に顔をうずめてしまった。

そうだよね…。
今の状況じゃ、完全に心を閉ざしてしまってる…。
誰かもわからない人に、しゃべる気もないか…。

「あ…。元気、出してくださいね…」

顔をうずめながら、両手で自分の肩を抱いて小さくなっていく彼を見てると、居たたまれなくなってきて、私はその場から立ち去ることにした。

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