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カレーの匂いにつられたのか、バンビちゃんも尻尾を振り振りして私の方にやってきた。
「あぁ、バンビも今ご飯あげるからねー！」
いつものドッグフードを皿に盛ってあげると、もっと尻尾を振って勢いよく貪り始めた。
この時ばかりはまるで猛獣みたいだ。
「さて、私も食べよ…」
そう思ってテーブルに視線を移したのだけど、その視線の先ではジント君がいまだにカレーに手を付けていない。
「あ…もしかして、カレー嫌いだった…？」
私のその問いに、ジント君は首を横に振っている。
「もしかして、まだ緊張してる？いいのよ、気にしないで食べて。なんなら私はキッチンの方で食べてくるけど…」
まだよくわからない人との食事はやっぱり嫌なのかな…。
ジント「い、いや…そうじゃなくて…ごめんなさい…」
喋ってくれるようになったことで、ちょっとは意思の疎通ができてきそうだけど、私にはジント君がどうしたのかまだよくわからない。
でも、彼の手を見ていると、なんだかスプーンの前でもじもじしている。
「あ、もしかして、スプーンの使い方分からない…？」
すると、ジント君は申し訳なさそうな顔でうなずいていた。
「そっか。ごめんね気が付かなくって…」
そうなんだ…。
スプーンの使い方まで忘れてるのか…。
料理ができるから、そういうところは大丈夫だと思っていたんだけど、何ができて何ができないのか、ちゃんと聞いておいてあげなきゃ駄目だ…。
「スプーンはね？こうやって使うのよ？」
私は右手にスプーンをもってカレーを掬って口に運んで見せた。
「んー、美味しいっ」
我ながらこのカレーは美味しかった。
早くジント君にも食べてほしい。
ジント君は私の真似をするように、右手にスプーンをもってぎこちない動きでカレーを掬おうと奮闘し始めた。
しかし、ものの見事にカレーは元の皿へ落ちていき、ジント君の口へは入ってくれない。
頑張れ…！
頭が忘れてしまっても、体は覚えてるものなのかなと思ったりもしたが、そんなことはないみたいだ。
彼のスプーンを持つ手はずっと大きく震えている。
そうこうしていると、ジント君は自分のズボンにカレーを盛大に落としてしまった。
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作者名：milkssss | 作成日時：2020年2月17日 15時
