甘い誘惑【ONE PIECE】 (ページ18)

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その後

結局、開店間際まで居座っていたシャンクス。

最初は大人しくしてたのに

時間が経つにつれ親に構ってもらいたい子供みたいに

ちょっかいをかけてきて

わたしが反応する度に心底嬉しそうな顔をする。

カウンター越しに見るその笑顔が

堪らなく好きだった…

この穏やかな時間が永遠に続けばよかったのに…

シャ「じゃ、そろそろ行くよ」

『うん…そうだ、シャンクス』

帰り際、大きな背中を呼び止める。

シャ「ん？」

『…今日の夜は一人で新しいメニューを考えたいの。だから来ないでね』

この人はいつだって神出鬼没だから

夜にふらっと現れないよう

しっかり釘を刺しておかないと。

シャ「ああ…分かった。邪魔はしねぇよ。また明日な」

『うん…またね』

〝また〟か…

最後の最後まで嘘ついちゃったな。

だんだんと小さくなる背中を眺めていると

なぜか視界がぼやけ始めた。

『今までありがとう…さようなら』

届くわけもない感謝の気持ちを口にした瞬間

つーっと頬を伝う涙の感触がして

ああ…わたし泣くほどあなたに恋してたんだって

余計に胸が締め付けられた。

・

・

その日の夕方

忙しなく働いていれば時間が過ぎるのはあっという間で

最後のお客さんを見送ったあと

closedの看板をそっと取り外す。

『…なにから始めよう』

カタクリお兄ちゃんが言っていた北西の島までは

半日かかる。

そこに行くには

朝一番に出る貨物船に乗せてもらうしかない。

それまでの間でできる限りお店を片付けないと…

店内にあった商品は

今日来てくれたお客さんにサービスで渡したから

ほとんど残っていない。

花や観葉植物は店先に出しておけば

誰か貰ってくれるだろうか。

本当はもっと時間をかけて整理して

いろんな人にお礼もして

ちゃんと終わりを迎えたかったけど

できそうにない…

わたしに残された時間はあと僅かだから。