甘い誘惑【ONE PIECE】 (ページ12)

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本当は言ってしまいたい。

わたしの心は

もうとっくの昔にあなたに奪われているのだと。

わたしも一緒に行きたい。

みんなと冒険したい。

あなたのそばにいたい。

次から次へと溢れ出る

いけない感情を飲み込むのに必死だった。

『シャンクス…』

わたしには

あなたの大きすぎる愛を受け入れるだけの器がない。

何もかも省みず

あなたの胸に飛び込んでしまえるほどの勇気もない。

臆病でずるい女なの。

シャ「そういや、お前は新世界の生まれだろ？家に帰りたいと思わねぇのか？親や兄弟に会いたくならねぇか？」

シャンクスはわたしの暗く澱んだ雰囲気を察したのか

わざと明るい口調で話し出す。

『…思わないよ』

あんな場所二度と帰りたくない。

大勢いる兄弟たちにはなんの恨みもないけれど

〝あの人〟にだけはもう二度と会いたくない。

シャ「そうか、そりゃ残念だ。お前を故郷に送る口実でそのまま掻っ攫っちまおうと思ったんだが…できそうにないな」

『…ぷっ…あははっ』

この期に及んでまだ諦める気のないシャンクスに

思わず吹き出してしまった。

本当にこの人には敵わないや。

わたしがどれだけ拒んでも全然めげないんだもの。

もしかしたらこの人は

諦めるって言葉を知らないのかもしれない。

ねぇシャンクス…わたしどうしたらいい？

もう好きが溢れて止まらないよ。

どんどんあなたに惹かれてしまう…

でもそれがすごく怖い。

本当のわたしを知ったらあなたは…

シャ「そろそろ戻ろう…こんな冷たくなっちまって。風邪でも引かれたらおれが困る」

わたしの頬をするりと撫でながら

柔らかい口調でそう言ったシャンクスに

『うん…』

と、ぎこちない返事をする。

憂鬱になっていても仕方ない。

だけどあと少しだけ

優しいあなたに甘えていたい…そう思った。

　