親友ポジは我慢しない【北信介】 (ページ6)

今日:1 hit、昨日:9 hit、合計:14,340 hit

振り返ればドロドロページ6

「おっそーい！A、遅刻やで！！」

『ごめんごめん！ちょっと腹痛くてかなわんかったんや』

あの後急いで着替えて
体育館へと向かったがもう既に皆リハをやっていて

村人Aである私の出番も終わっていた。

まぁ、リハなんてやらなくてもいいから

楽なんだけど。

クラスメイトにこっぴどく叱られた後
私はぼんやりと侑くんと愛生の演技を眺めていた。

二人とも、別れたはずなのに何であんな
本物の恋人みたいなこと出来るんやろ。

気まずいとか思わへんのかな、まだ好きなんかな。

でも、侑くん、は

一応、私の事…す、好きなわけやから。

…。それも、怪しくなってきたけどな。
そもそも、侑くんが私を好きになるとかおかしい事
なんやろうな。

今まで侑くんが好きそうなタイプは
可愛くて、派手で、オシャレな子。

私なんてその真逆と言ってもいい。

『分かんない…』

やだな。
私、誰が好きなんだろ。
誰を愛してたんだっけ。

もう全部投げ出したくて
でも根性がないせいでそれも出来なくて。

結局、溜め込んで溜め込んで溜め込み続けてる。

考え込めば考え込むほど分かんなくて。

それでもやっぱり諦めきれない自分がいて。

『ぐぇっ！？』

ピト。
頬にあたる冷たい感触に、私は思わず
小さい悲鳴を上げた。

悲鳴と言っていいのかは、謎だけど…。

「変な声出すなや。人がわざわざ飲み物買ってきてやったんやで？感謝しいや。」

『あぁ、宮くん…。こりゃどうも。』

いつの間にやら休憩に入ったらしい
宮くんはよっこらせと私の横に座って
自販機で買ったと思われるものを飲んでいた。

気まずいなぁ……。
ろくに話して来なかったから。

こういう時、いっつもどんな話してたっけ。

考えれば考えるほど、分かんない。

「なぁ、俺って野獣に見えるか？」

『え？』

唐突に意味わからん質問をされて
頭にハテナが浮かぶ。

侑くんが野獣に見えるかということ、なのか？

とりあえず頭の中で野獣の侑くんを想像する。

何だろう、何か…

『宮くんと野獣……合う。何でやろ。やっぱり野獣みたいに乱暴そうやからかな？』

「失礼すぎやろ！誰が乱暴や！」

間髪入れず私は侑くんにツッコまれてしまった。
え、そういう事じゃないの？

でも、こんなに表情豊かな侑くん見たのは
久しぶりな気がして

『あははっ、ふふっ、あはっ』

いつの間にか笑っていた。

何だろ、私、何がしたいんだろ。