七話 ページ7
紅茶の注がれたカップを片手に、本のページを捲る。
口はあれから閉ざされたままで、眉一つ動かさない表情からは何を思っているのか全く分からない。
「…A。」
「女性に叩かれたんですか。」
ひら、と、少し黄ばんだ紙が捲られる。
何故わかったんだ、と心の中で思えば、
「ジョナサンは怒った時に平手で殴ったりはしませんから。」
と、よく知った友人の事を話すように、ゆったりとした声音で話す。
勿論、視線はこちらに向いてはいないが、心臓を鷲掴みにされたようだ。
「それだけで、何故女性だとわかるんだ。」
そう言うと、Aはゆっくりと顔を上げる。
静かに見つめてくるアイスブルーの瞳を負けじと見つめ返すと、小さく息を吸う音が耳に届く。
「………勘です。」
そう言い放った後、逃げるように視線を本へと戻す。
「なかなか鋭い勘だな。確かにそうだ。」
「そうですか。」
それだけ言うと、Aはゆっくりと目を上下させ、文字を辿っている。
「?……詳しく聞かないのか。」
「聞いてほしいんですか?」
ゆっくりと目を伏せると、Aは新しくポットから紅茶を注いだ。
「なら、聞きません。お茶でも飲んで、ゆっくりしましょう。ね?」
ふ、と、口の端を少しだけ持ち上げ、柔らかく笑った彼女に、ドクリ、と心臓が大きく跳ねる。
「……変なヤツだな、お前は。」
ふい、と、視線を外すと暫くした後、また、規則的な紙の捲れる音が聞こえだし、僕は紅茶の注がれたカップをゆっくりと口に運んだ。
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東雲出雲(プロフ) - 罠做さん» ありがとうございます!文章が素敵だなんて(*´ー`*)続編できましたので、そちらもどうぞ宜しくお願い致しますm(__)m (2015年8月18日 11時) (レス) id: 64e849f3b1 (このIDを非表示/違反報告)
東雲出雲(プロフ) - ランタンさん» ありがとうございます!続編ができたので、そちらもどうぞ宜しくお願い致しますm(__)m (2015年8月18日 11時) (レス) id: 64e849f3b1 (このIDを非表示/違反報告)
罠做(プロフ) - 続編楽しみにしてます!!文章が素敵で読み易かったです、続き気になりますねo(^▽^)o (2015年8月18日 2時) (レス) id: 1a112de355 (このIDを非表示/違反報告)
ランタン(プロフ) - この話とてもよかったです!続編も頑張ってください! (2015年8月17日 20時) (レス) id: 751d6d43a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:東雲出雲 | 作成日時:2015年8月15日 11時