第八話 ページ9
逃げて私も皆みたいに＿。やりたいことをやれるように、自由になりたい。
今までのように雁字搦めの、鎖とはお別れだ。
私は灰色の帽子と、黒い鞄を持って、紺色の空の外に飛び出した。
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『行くあてもなく出てきてしまった‥。』
自由になりたいといっても、何にも目的もなく出てきてしまった。第一、中学三年生が親の頼りもなく、生きていけるはずがないのだ。
『もう数年だけ、我慢すれば良かったのかなぁ‥』
あんな親でもいなきゃいないで、生きるのは大変なのだ。だが、自分の心には嘘はつけないし、なにせ、話して通じる相手ではなかった。
第一、もう私は敵だ。一晩たてばニュースにでもなって、ヒーローが探しに来るだろう。そして私は刑務所行き‥‥。
『お先真っ暗だなぁ‥。』
そう呟くも虚しく、夜の寂しい住宅街の壁に反響するだけだった。チカッ、チカッっと点滅する街灯が寂しさを強調するようだった。
あたりは、もう真っ暗で、学生が出歩く時間ではない。警察にでも見つかれば補導されるに違いない。何とかして今日一日を過ごせればいいんだけどなぁ‥。
『所持金が‥諭吉が1、2、3と野口英世が2枚、と420円‥。32420円‥。』
ホテルか‥？いや、ホテルなんざ学生が使ったら怪しまれるに決まってる‥。ネットカフェは近くにないし‥。どうしよう、一回家に戻って、一晩？いやいや、ヒーローが来たら即お縄だし、遺体の側で寝るのも嫌だしなぁ‥。
『ほんっとにどうしよう‥』
そんなことを考えながら家の近所をうろうろとしていると、近くに明るく光る店があった。
『セブンイ○ブンだ！』
食料はここで調達していこう。せめて、明日の分くらいは買っていくのが無難だろう。
自動ドアが開き、かごを手にとって店内を回る。
今日の夕食にと弁当、朝食用の六個入りのパン、顔を隠す用に黒いマスクを、後は筆記用具、ノート(何かあったとき用)、おにぎり二個を購入した。
そして、レジに向かい、かごを置いた。店員さんがひとつひとつバーコードをかざしていく。
すべてが違うかごに移されたのち、画面には1268の文字があった。
「1268円です。」
『え？』
思ったよりも値段は高くなっていた。そりゃそうか、税込だもんな‥。
さよなら、野口。
「お弁当、温めますか？」
『いいえ。』
「1300円からお預かり致します‥。32円のお返しです。ありがとうございました。」
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鶉野 - 応援、ありがとうございます。面白いと思ってくださったのなら嬉しい限りです。更新、頑張らせて頂きます。 (2020年5月25日 6時) (
レス) id: 1589f04ac1 (このIDを非表示/違反報告)
ヱる - 凄く面白いです。主さんのペースで無理せず更新頑張ってください。 (2020年5月25日 0時) (レス) id: 660f048392 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鶉野 | 作成日時：2020年5月18日 14時
