愛さない結婚をあなたと (ページ27)

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「最寄りどこ？送るよ」

「いや、大丈夫だよ。家近いし。」

家に送ってもらうわけにはいかない。

それに、最寄り駅は新入社員が1人で住むような場所ではないというか。

とにかく、家がばれるとなんだか色々と勘付かれてしまいそうで焦る。

「あ、えっと、逆方向だから。

本当に大丈夫だから。じゃあまた。」

駅について、反対の改札に早足で向かう。

ふぅ、なんとか誤魔化せた。

もしかして会社の人と親しくなるのは私にとってはリスクが高いことなのかもしれない。

いつまでも隠し通せるわけじゃないってわかってるけど、それでも今の居心地の良い場所を壊したくなくて言えずにいる。

まだ言いたくない。

私が社長の娘だと知ると、周りは私をちやほやする。

顔色を窺うようになる。

そんなこと望んでないのに。

おじさんとおばさんにはすごく感謝している。

でも、私が2人の子供だと公にしないのはきっと、本当の親子じゃないから。

本当に血の繋がっている親子だったら何も考えることはなかったのかも。

なんて。

何年も過ごしていたあの家は、ずっと、私の居場所じゃないような気がしていた。