【派生】及ばぬ恋の滝登り4 (ページ26)

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ベンチに座ると､黒猫…スヴェンガリは陽一の膝上で丸くなる｡

陽一｢ふふっ､よしよし…｣

優しく背中を撫でてやると､短くて触り心地の良い毛の感触が手に伝わってくる｡

スヴェンガリ｢ﾝﾐｬｱ‥｣ｺﾞﾛｺﾞﾛ‥

相変わらずクールな雰囲気は変わらないが､気持ち良さそうに喉を鳴らしている｡

しばらく背中や喉を撫でてやっていると､スヴェンガリが陽一にスリスリと体を擦りつけ始めた｡どうやら｢もっと撫でてくれ｣と要求しているようだ｡

陽一｢ったく､すっかり甘えん坊じゃねぇかよ…｣

満更でもなさそうに笑うと､優しい手つきで猫なら喜びそうな部分を順番に撫でていく｡

その間､スヴェンガリは日向ぼっこをしながら目を細めてしきりに喉を鳴らしている｡

そんなことをしている間に､気づけば陽一の手はスヴェンガリの腹を撫でていた｡

陽一(…この黒猫が親父って思いづらいな)

油断も隙もないスヴェンガリの表情を思い浮かべ､膝上でウトウトしている黒猫を見つめる｡

普段見ている父親は常に冷静沈着な紳士で､感情的になることは滅多にない｡

キャッツアイとターコイズにも穏やかな空気をまとったまま接しているし､何かに当たるようなことも全くない｡

そんな彼が今､心も体も猫となって最愛の娘である陽一に全力で甘えている｡

そう思った時､陽一の顔には笑みが浮かんでいた｡

スヴェンガリは不思議そうにしていたが､そんなことを気にも止めていない陽一はクスクスと1人で笑っている｡

昼下がりの温かい日差しが降り注ぐ世界で､少女と黒猫は平和なひと時を過ごしたのだった｡