【獄都事変】夢でまた、逢いましょう。 (ページ2)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:5,263 hit

0.「儚い命」ページ2

生まれたときから私のそばにいてくれた貴方の魂は、とても美しいものでした。

わたしは貴方の魂の美しさに、「私も、この人のような美しい魂が欲しい」と思うようになっていきました。

そうして時が経ち、私と貴方は別れを告げ、それぞれの人生を謳歌しようとしていた頃。

突然貴方はこの世から姿を消し、どこかへと消えていってしまったのです。

そのことは真っ先に、他の誰でもない私の元へと届いてきました。

私が愛したあなたは、もうこの世には存在しない。

その事実に、私は酷く心を痛め、深く悲しみました。

私を見守るような眼差しで見てくれるその目も、私よりも少し大きくていつも私を守ってくれた温かい手や腕も、優しく包み込んでくれるような控えめな笑顔も、もう見ることは出来ないのです。

そう考えていくうちに私の魂はみるみるうちに濁っていき、ふと気がつけば足元が覚束ない、みっともない姿になってしまっていました。

そう、もうだれも彼を見ていないし、私の姿ももう、誰にも見えなくなってしまっていたのです。

なぜ私ではなかったのか。

なぜ、あんなに美しい魂を持っていた彼が犠牲になり、私は残ったのでしょう。

なぜ、出来損ないでいつも怒られてばかりだった私ではなく、優秀で周りから期待されていた彼が居なくなってしまったのでしょう。

「……A、」

その落ち着く優しい声で、私の名前をもう一度呼んでほしい。

また抱きしめてほしいし、私の冷たくなった額に、もう一度親愛のキスをしてほしい。

その、その美しい魂だけでもいい。

私の願いが叶わぬならば、魂さえ私の夢の中に閉じ込めて、もうニ度と離さなければいい。

もし転生をしていたのならば、一生の末端を見計らって、奪い取ってしまえば良い。

「……あなたの綺麗な魂は、どこにあるのかしら。」

亡者の魂は、酷く穢れきっている。

それは、あなたの魂がいかに美しかったかを表しているのよ。

「_____貴方の綺麗な魂に、夢でまた、会いましょう。」

遠くの方から、足音が聞こえてきた。