【刀剣乱舞】おうちに、かえして。 (ページ8)

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7.「あけの明星」ページ8

気がつけば外は、明るみを帯び始めていた。

Aは布団で体を起こしたまま、鶴丸はそんなAの隣で胡坐をかきAに声をかけ続けるまま、かなりの時間が経過してしまっていた。

「……、結局、食べないのか」

今にも眠ってしまいそうな眼の鶴丸にそう問われても、Aはあの一言以来何の反応も示さなくなった。

……その体制のまま、眠ってしまっているのかと思ってしまうほどに。

「……ああ、埃まみれだぞ。これじゃあちょっと頂けないな。」

冷えるだけ冷えたな、と備え付けてあった箸で味噌汁を静かにかき混ぜて笑ってみせても、声が響くのみでAの気を引くことは絶望的だった。

眠気と寂しさから痺れを切らした鶴丸は盆を持って立ち上がり、特に意識もせず、いつも通りに襖を開ける。

風の漏れ入る音すらしなかった静かな空間に突然現れたすぱん、という音に驚いたのか、小さく素っ頓狂な声が後ろから聞こえてきた。

「……ん、…ああ、すまない。吃驚しちまったか？」

余程の衝撃だったのか小さく縮こまり震えるAの元に近寄れば、こくこく、と小刻みに頷かれる。

ああ、相当吃驚したんだな、と解釈していたが、ふとAが肘を抱いているのを見て、少しの違和感を感じ取った。

_____ああそういえば、部屋と外との温度差もあったような。

襖が開いたことによって、急に体が冷えたか何かしたのだろう。

驚きと寒さに震えるAを見遣り、鶴丸は自身の着ていた上着を静かに着せて、フードを被せてやった。

彼の着ていた上着のフードが、彼の頭に深々と被せられて居たからである。

「ほら、これで寒くも怖くもないだろう？なんせ、俺のこの上着はかなり重いからな！」

重さで潰れるなよ、とだけ声をかけて、盆を返しに厨へと向かう。

しかし、どこかで顔を見たことがあるような気がする。

何か大事なものを忘れてしまっているのか、それか知らないのか。

「………A、かあ。」

どこかで聞いたことがある、呼び慣れている感じがある。

それなのにどうして、思い出せないものなのだろうか。

んんん、と唸れるだけ唸ってみたが、どうにも寝ぼけきった頭では何も考えられず、今はいいか、という結論に至る。

どうせ後々知ることとなる物事なのだから。

誰かがそう呟いたような、気がした。