【刀剣乱舞】おうちに、かえして。 (ページ4)

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3.「暴れ虎にご用心」ページ4

「……精神的に異常をきたしている様子が見受けられました。前の主に、相当なことをされたのでしょう。」

そう、言葉を紡げば三日月の顔から優しさのこもった笑顔が、ほんの刹那だけ消え去った。

残るものは___穏やかな笑顔に隠されていた、闇夜に浮かぶ月のように冷ややかな眼差しであった。
その眼差しはどこでもない遠くへと向かい、三日月は口を開いた。

「……精神、か。まあ、此奴はちと周りに流されやすい節があるからな。その前の主とやらに、感化されてしまったのであろう。」

ぽつり、と独り言のように一文を短く紡ぎ、いつもの笑顔を浮かべながら切なげに三日月は言葉を続け、Aの方を見やった。

艶やかに長く伸びていたはずの黒髪も無造作に切り捨てられ、前髪もまた長く伸びたまま左側に流され、左目が完全に隠れてしまっていた。

かつてはあんなにも美しき刀だったというのに、何故こんなにまで荒んでしまったのだろうか。

そんなことを、ぼうっと三日月は思案しているように見えた。

「……A殿とは、何か関わりがあるのですか？」

一期がそう問えば、「いやあ、」と返事をする三日月。

「Aは五条の打った刀でな。俺たちを打った三条とは師弟関係にある。それ故に、絡みはそこそこあってな。」

まあ、三条派と言っても過言ではないな。

三日月が口を動かす。

それを、隣で姿勢を一切崩すことなく大人しく聞いている一期。

そして、そのふたりに見守られ、静かに眠るA。

この部屋は、あまりに静かすぎた。

その話に少なからず心当たりがあったのだろうか、一期が怪訝そうな顔をして思考を巡らせた。

「………、そろそろ、夕餉の時間になりますね。」

あのやたらと賑やかな奴が来る前に、広間へ向かわなければ。
やっと寝付いた可愛らしい鳥を、起こされてしまっては大変だ。

一期がそう思い立ち上がると、それに呼応してもぞり、と仰向けに寝ていたAが一期たちに背を向けるようにして寝返りを打った。

三日月も一期と同じことを思ったのだろうか、ゆっくりと立ち上がって襖を静かに開け放った。

「……。今日も今日とて、月が綺麗だ。」

暦では初夏になるのにも関わらず、幾分冷ややかに流れてくる風。

外の空気が心地よかったのだろうか、ほけほけ、とでも言いたげな笑みを浮かべて、三日月は部屋を後にする。
それについていこうと、一期も部屋を出ていき襖は閉められた。

Aが寝返った理由を、二振りは知らない。