【刀剣乱舞】おうちに、かえして。 (ページ12)

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11.「声も何もない」ページ12

新しい刀がやってきた。

名前はAさんというらしい。

なにやら不思議な雰囲気をかんじたから、思い切って話しかけてみようと思い立ち、本丸の案内をすることにした。

「……で、ここが浴場！みんなで仲良く入るんだ～！」

朝餉のときから主以外に反応を示すことが一切なかったAさんだから、話しかけても反応が返ってこないことにはなんの疑問も抱かなかった。

……ただ、見回りをしていた長谷部が近くを通り過ぎた時、繋いであった手が強く握られたんだ。

なんでかは分からなかったけれど、多分思うことがあったんだろうな。

……そういえばいち兄から聞いた話だと、Aさんは前の本丸の主から散々な扱いを受けて立って聞いた。

それにも何か関係があるのかな。

「……Aさん、大丈夫？」

「………、ごめんなさい」

ぽつり、と溢れるように呟かれた掠れる言葉に、宛名は書かれていなくて。

もしかしたら長谷部に向けられていた仲間もしれないけれど、長谷部は既に主の執務室へと向かって行ってしまっていた。

「……Aさん、長谷部はもう居ないから大丈夫だよ？……それに、Aさんのこと怒ってなんかないから！」

僕の言葉に安堵したように、手のひらから力が抜けていく。

______ああ、よかった。

「……、怒られない……？」

「怒る理由なんてないと思うよ？長谷部も、そんな頭ごなしに怒るような刀じゃないと思うし！」

僕が励ますように言ったなら、Aさんは笑顔を取り戻すのだろうか。

その決して笑顔を見せない顔に、笑顔を降らせたい。

そう思いながら、本丸の中を隅々まで案内して行った。