【刀剣乱舞】おうちに、かえして。 (ページ2)

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1.「姿見、隠蔽」ページ2

真白い衣装に真黒い上着を羽織った性の区別がつかぬ太刀は、こんのすけと呼ばれる狐と粟田口派の太刀の間に挟まれ、その小さな本丸の門前に立ち尽くしていた。

_____結局、彼(実の性別は女子であるが見た目は男らしいため) は俗に言う「ブラック本丸」から連れ出されてきてしまったらしい。

漆黒色のフードを深く被っており、なおかつ顔を完全に隠すためかはわからぬがこれまた真黒い布で目を覆ってしまっているために表情というものはまったくもって察せないのだが、口元が緩むことはないということだけは誰が見ても確かなことであった。

「ここが、新しい本丸です。新しいおうち、ですな。仲間こそまだ少ないですが、仲良くしてくださいね。」

不意に、粟田口派の太刀が口を開いた。

名は、一期一振。
粟田口唯一の太刀である。

「……。」

一期のその声に言葉を発する様子もまるでない白黒の太刀。

名は、鶚守(みさごのかみ)国永。
しかし民衆は、この名で彼を呼んだことなど、無に等しかった。

「Aさん。前の本丸での出来事はさぞ心の傷に響くものだったでしょう。無理に癒せとは言いませんが、どうか強く……」

そう、こんのすけが呼んだとおり、人は皆彼のことを「A」と呼ぶ。

そのことに鶚はどのような感情を抱いているのかは知りえないが、格段快くも、また格段嫌にも思っていないようではあった。

「………。」

そうして、この無表情であった。

＊

「貴方がA様ですか？」

本丸の、主部屋にて。

そこにはここの主である審神者がまだかまだかと待ち続けており、今こうして話をしている訳である。

「ええ、この方がA様です。ブラック本丸で前の主に夜伽を強要され、その上目の前で仲間の刀剣たちを折られたとのことで。」

「それは……とても辛い思いをされたのですね。御悔やみ申し上げます。」

「えぇ、そのことなのですが……。」

ふと前の主の話題に反応したのか、それまでずっと足元だけを見つめていたAが不意に顔を上げた。

「………ここは、どこですか。」

「……え、…？」

その言葉を聞いた審神者が、声を濁らせた。

_____今、この刀剣は何と言った……？

「ぼくのあるじさま、はどこですか」

「A殿。あなたの主は目の前に……」

「あるじさまは、ぼくをあいしてくれる男の人ですっ！」

Aはそう叫び出し、急に暴れだした。

それを一期が制し、暴れ出さぬように押さえつける。