□118.君を網膜に映していたい ページ38
***
目を覚まして、1番最初に映ったのは、
ﾎﾟﾛﾎﾟﾛと涙を零す君の顔だった。
…どうしたの？なにがあったの？
.
気になって彼の頬に手を伸ばして、
“泣いてるの…？” と聞けば、
目をまん丸くして驚いている直輝。
…あ、可愛い…、こんな顔、初めて見た…。
.
.
直輝｢……………A…？｣
｢………ん？｣
直輝｢…………A…？｣
｢…ふふ…、なに？｣
直輝｢…A…っ…！！｣
｢…わっ…、ちょっ…、苦しいよ…！｣
.
何度も何度も名前を呼ばれたと思ったら、
ｶﾞﾊﾞｯと勢いよく抱きついてきた直輝。
なんだか今日は、レアな直輝ばかり見ている気がする。
.
｢…私、どれくらい寝てた…？｣
直輝｢………1週間。｣
｢えっ！嘘！そんなに…！？｣
直輝｢……死ぬかと思った。｣
｢…私が？｣
直輝｢…俺が。｣
｢えっ、｣
.
直輝｢…A、全然目覚まさないし、
呼んでも反応しないし…、医者は命に別状はないって言うけど…、じゃあなんで起きないんだよ…って、
怖くて……、この1週間、生きた心地しなかった…。｣
｢………ふふ……、ごめんね…？｣
直輝｢……笑うな…。
…っていうか…、どうしてあんな無茶なこと…。｣
｢…直輝を殺人犯にしたくなかったの。｣
直輝｢…それでAが死んだら意味ないだろ…！｣
｢…そう…だけど…｣
.
しゅん…、となった私を見て、
直輝がはっと我に返ったような顔をした。
.
直輝｢……ごめん、怒れる立場じゃなかった。
………止めようとしてくれてありがとう…。｣
｢……ん。私もごめんね…。｣
***
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作者名：紙兎
| 作成日時：2020年3月16日 7時
