■83.理性の糸が切れる音 ページ3
***
ちゅ、…ちゅ、とやらしい音を立てながら
首筋に何度もくっついてくるその感覚が、
彼女の唇だと気づくのに、少し時間がかかった。
だって、何度も言うが、Aがこんなことをしてくるなんて微塵も思ってなかったから。
.
いつもの大人しく内気で引っ込み思案なうえに恥ずかしがり屋なAの姿はどこにもなくて、
その目にはハッキリとした熱と、
自分に触れてくれという欲が宿っていた。
.
…………ああ、もう、無理だ。
.
.
彼女の細い手首を掴んで、ベットの上で押さえつければ、
一瞬で俺の体の下にくるA。
.
｢…わっ………！｣
こうなることを想像していなかったなんて言わせない。
そんな気持ちで目を丸くしているAの表情を
上から見下ろしていた。
.
直輝｢…………煽りすぎ……｣
｢…煽られた…の…？｣
直輝｢……どこで覚えたのそんなの…、……ムカつく、｣
.
彼女の髪をさらりと払い、
剥き出しになった耳に ふ…っと息を吹き込むと、
ぁ…、と小さく声が盛れたA。
その反応が堪らなくて、
耳の縁を唇でなぞるとびくっと肩を震わせた。
｢…、…ぁ…なお…き…｣
直輝｢……っ……はぁ…｣
.
自分から出た息が尋常ではないほど熱くて、
どんだけ余裕ないんだよ…って
自分に呆れてしまう。
***
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作者名：紙兎
| 作成日時：2020年3月16日 7時
