■81.君からのSOS ページ1
***
Naoki Side
今思えば、最初に電話で声を聞いた時から、
なんだか様子が変だった。
.
ミスパンダの方の任務が難航してしまい、
今日早く帰れると言ったのが無理になりそうだと彼女に電話をかけたのだが…、
泣きそうな声で “やだ” と言うAに少し…いや、だいぶ驚いた。
“大丈夫” とか “無理しないでね”
などという言葉が返ってくるのだろうと
勝手に思っていたから。
.
『飼育員さん、今の電話彼女？』
直輝｢…え……、あ、…いや、｣
.
近くにいたミスパンダがなんだかニヤニヤした様子でこちらを見ている。
女性というのは他人の恋愛の話が好きだと言うが、
どうやら彼女も例外ではなかったらしい。
.
直輝｢……彼女では…ない、｣
『え？なんて？？』
.
ﾎﾟﾂﾘ、零れた言葉は彼女の耳には届かなかったようだ。
元々返事をするために言った訳では無い。
Aとの関係を自分に言い聞かせるために言ったのだ。
.
直輝｢…なんでもない。それより悪いけど今日はこれで終わりだ。急用ができた。｣
『ほら、やっぱり彼女じゃん。』
直輝｢……お疲れ様。｣
.
隠さなくってもいいのにー
と言ってうるさい彼女の言葉を無視して、
少し強引に彼女の催眠を解いた。
.
＿＿＿＿＿＿＿＿…早く、早く帰らなければ。
家で1人で泣いているであろう彼女のことを想像すると、
いてもたってもいられなくなった。
***
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作者名：紙兎
| 作成日時：2020年3月16日 7時
