【おそ松さん】お前らがいる限り、元には戻れない。２

43話。 ページ13

「なんで…。」
「ばいばい、邪魔者。さっさと消えて。」


カウントダウンの音がチクタクと音を立てて
静かに消えていく。

誰にも止められないだってさ。
たとえ、その運命の持ち主にだって。




「今日はお疲れ様〜！」
「うん、お疲れ様！じゃあまたね。」



たわいないお喋りに終止符が付かれた。
辺りはすっかり見えない星空を見上げられる
くらいに薄暗い。

なんて、あっという間の一日だったのだろうか。
こんなに楽しい日は生まれて初めてかもしれない。


恋しかった朱色の光は最近目にしていない。

それぐらい大人になったのだと
気候が訴えてくるような感覚にかられた。



「確か、『月が綺麗ですね。』だったよね。」

何故か学生時代に習ったその言葉が頭をよぎった。


「あの頃が、懐かしいな。
戻らない青春が恋しいとか私はおっさんか。」

笑いあって、泣いて、愛されて。
そんな当たり前の生活は私の手の中にはもうない。


「お母さん…。お父さん…。」
「私、死んでもいいわ。」

私は唇にそっと手を置いた。
この言葉。どっちの意味なんだろうか。

発した自分でさえ頭を抱えるほど
分からなくなった。



頬にまで溢れてきた涙をそっと拭った。

「あ…。いけないっ。」


私は顔まわりをばっと手で隠した。

ここは大通り。
人が多いのは確定だし、信号待ちならなおさらだ。


こんな所で泣くなんて、公開処刑だし、
今失恋したみたいに思われちゃう。

しかし、今は夜遅くなので、
いつもより人は多くなかった。


そう言えば、
ここの交差点って信号遅かった気がする。
なんて、私は独り言を唱えた。



カウントダウンが残り十秒を切った時、
魔女は足音を立てながら彼女に近づく。

至近距離に達した時、彼女の耳元で呟いた。








「じゃあ、私のために死んでくれる？」






き"ゃあああ"ああ！





人々の叫び声と雑音が混ざった。
騒めきが人々を飲み込んでいく。

皆、口を揃えず同じ言葉を繰り返し、話していた。【女性が車に轢かれた】と。

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