32、第二ボタン ページ32
ウソでしょう!?
「茜!お願い!付き合って!!」
「えっ?えっ??」
茜を道ずれに勢いよく階段を駆け下りる。
「はぁはぁ、ありゃ、もう靴ないわ〜」
靴箱を確認した茜が、諦めたように笑った。
「そんな…っ」
無理、無理!
諦めるなんて、無理だからっ!!
待って、お願い、帰らないで。
私、まだ
『ボタンをください』って言ってない!!
「ちょっと、A!?」
外靴に履き替え、飛び出した私の後ろから茜の声が聞こえる。
走って、走って、走って。
校門を出て二百メートルくらい向こうに、クラスの男子と一緒に歩く川島を見つけた。
「川島!!!」
自分でもビックリするくらいの声が出た。
その声に、周りの人が一斉に振り返った。
川島が立ち止まってこっちを見ている。
もちろん、他の男子も。
し、しまった……。
「なんだぁ?栗原。
川島になんの用かなぁ〜?」
大倉がニヤニヤしている。
こ、このやろ。絶対わざと言ってる。
「や、えっと、ね?」
動揺して言葉を探す私の後ろから、はぁはぁ息を切らしながら走って来た茜が言った。
「大倉!あたしに第二ボタンちょうだい!」
周りがどよめいた。
「マジ!? 俺のボタン!?
なんだよ、さては俺に惚れてたか!!」
そう言って、まんざらでもない様子でボタンを外し始めた大倉に、「貰ってあげるんだよ!」と茜が返して爆笑が起きて。
みんなが盛り上がっているうちに、今だ、と川島に近づいた。
「川島、ボタン欲しいんだけど……」
ドキドキしながら顔を上げると、黙ってじーっと私を見てた川島と目が合った。
「川島…?」
「え、あ…っ、ごめん」
言いながら、ブチン、と第二ボタンを外して私の手のひらに置いてくれた。
やった…。川島の第二ボタンだ…!
「ありがとう!!」
嬉しくて。本当に嬉しくて。
満面の笑みで川島お礼を伝えたあと
「あれ?ちょっ、待ってよーーー!!」
後ろから叫ぶ茜の声を聞きながら、学校に走り戻った。
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作者名:ユチコ | 作成日時:2018年7月1日 12時