21、特別な女子 ページ21
教室に戻った途端茜たちに囲まれた。
「吉村でしょう!? なんだって!?」
興味津々な目が、一斉に私に向けられた。
「や、なんか……、付き合って欲しいって…」
「やったじゃん!! Aおめでとう!!」
私が吉村を好きだった事を知っている智美たちは、まるで自分のことのように喜んだ。
「や、違うっ、まだわからないから…っ」
智美たちに声を抑えるよう必死でお願いしてるうちに、廊下にいた川島たちが教室に戻って来た。
私の隣に戻って来た川島が、暑いのかノートを団扇代わりにして扇ぎ出した。
「わ、汗だくじゃん!何してたの?」
川島の顔を見て、智美が川島の前の椅子を反転させ、向かい合ってふたりで話し始めた。
……これも少し前に気付いたんだけど。
川島って、私を含め他の女子と話す時は『うん』とか『いや…』とか、最低限の返事しかしない癖に
「だから違うから!お前、ちょっとおかしいわ!」
……ほら、また。
智美とだけは、本当に楽しそうな顔で話すんだ。
しかも『お前』とか呼んじゃって…。
それが羨ましくて、私も必死で面白い話を探したりするけど、照れたように軽く笑うだけで、智美に見せるような顔はしてもらえない。
今日は智美と一段と盛り上がっている。
ふたりだけにわかる会話。
ふたりだけの空間。
そこに入れない自分が寂しくて、悔しい。
目の前の茜や美香の会話なんか、全然耳に入って来ないくらい、私の全神経は、仲良さそうに話す二人に集中していた。
その時だった。
突如、鮮明に聞こえて来た川島の声。
「いや、マジでウケる。お前と居ると飽きねぇ〜」
ドックン!!と、心臓が鳴った。
「ちょっとぉ!!それどういう意味よ〜!!」
笑い合う川島と智美。
私の頬に、涙が伝った。
21人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ユチコ | 作成日時:2018年7月1日 12時