３８ song. ページ39
「俺、本当に笑い堪えるの必死だったんだけど！」
「タマもよく我慢したな」
「ちょー我慢したから腹いてえ」
「普通「どちらの惑星から？」って聞くか？！」
皆、各々が涙目になるほど笑い転げているが、心春は全然状況について行けなくて「ドッキリ大成功」の意味も理解できずにいた。
一織ですら笑いを堪えきれず過呼吸になっている中、心春一人だけが深刻そうな顔で話を切り出した。
「皆さん……壮五さんから大切なお話があるそうです……」
「いや、だからそれがドッキリなんだって！！」
「………え？？？」
▼ △ ▼ △
後日、万理から聞いた話ではIDLiSH7が行っているWEB番組のコーナーで「逢坂壮五が宇宙人だとカミングアウトをしたら、事務所の後輩はどんな反応をするのか」という検証ドッキリを仕掛けられたと説明された心春。嘘を吐かれても怒るどころか「嘘でよかった……壮五さんが悲しまずに済んだのですね」と安堵で涙目になる心春を見て、IDLiSH7だけではなく計画に協力した紬と万理の心も罪悪感で押しつぶされそうになった。
万理に見せてもらった番組のコメント欄には「この子、あのT大学園祭の子？！」「アイナナの後輩だったの！？」というものの他「いや、なんで騙される？？」「どちらの惑星から？は草」「壺を買わされそうで心配」「純度１０００％」など、沢山のメッセージが寄せられていた。
「この番組放送後から事務所の電話もひっきりなしだよ。音楽番組からインタビューまで、たくさんの仕事の依頼が心春ちゃんに来てるよ」
「きゅ、急展開についていけません……」
ついこないだまでの心春は、歌が大好きなただの女子高生だったのだから無理もないだろう。戸惑う彼女に、万理はさらに特大の爆弾を落とす。
「驚くことは、まだあるよ」
「まだあるのですか！？」
ふふ、と得意げに笑う万理は、一通のメールを見せた。
それは心春への出演依頼で、書かれている番組名は……
「と、TRIGGERさんの冠番組！？」
▼ △ ▼ △
小鳥遊事務所の社長室には、社長の音晴と万理の姿があった。
「心春くんがデビューするのは、まだ早いよ」
「しかし……」
「確かに知名度は上がってきているよ。でもね、知っている人が多いことはファンの数に比例しない。心春くんにはもっとファンがつく必要がある」
だけど、と音晴は繋げる。
「心春くんなら必ず近い将来、もっと多くの人を魅了する国民的な歌手になるよ」
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作者名：冬眞 | 作成日時：2021年7月3日 13時
