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基準値以上の魔法使用が認められた現場に着くと、その十数m先に怪しげな女がいた。全身の至る所から出血しており、足取りが覚束ず、雨だというのに傘を差していない。明らかな不審者。先程の警報に関係がある可能性が高い。
 同僚を見ると、同じ結論に至ったようで、「行くか」と合図を取る。

「セ……、…レン、……」
 何事か呟いている女に眉を寄せる。気が触れているかもしれないな……。
「おい、止まれ」
 声をかけるが、聞こえなかったのか反応がない。……いや、この距離で聞こえないなんてあるか?
「止まれ!」
 先程より近づき、声量を上げる。
 やはり反応がない。
「止まれと言っている!」
 肩を掴んだ。すると、女はゆっくりとこちらへと振り返った。
 恐ろしく顔の整った少女だった。しかしその目には狂気が宿っていて、一瞬たじろいた。いや、何を怯む必要がある。気を取り直し、少女を見る。
「……何」
「お前、基準値以上の魔法を使っただろう」
 決めつけた言い方ではあるが、大体、こんなものだ。大きい魔法を使った奴というのは、見たら分かる。
「どうでもいい……」
 答えになっていなかった。質問がどうでもいいというより、俺達の存在自体がどうでもいいと言っているようだった。同僚の1人も同じように感じたようで、イラついた調子で少女の前に出た。
「チッ、あまり舐めた態度を取らない方が良い……このまま連行する事もできるんだぞ? 話を聞こうとしてやっているだけマシと思え」
 そいつが少女の腕を掴んだ。瞬間、彼女は猛然と睨んだ。抵抗するように、腕を振る。だが、力量差は歴然だ。頭がおかしい奴なのは間違いないだろうが、今時、街中で魔法を使うような奴は大抵こうだ。さっさと連れていくか……。
 そう、一瞬気を抜いた隙を突いたかのように、
「ぐぁっ」
 同僚の呻き声が聞こえた。
「なっ……」
 見れば、同僚の、少女の腕を掴んでいた手が焼け爛れていた。規定値以上の魔法を感知したセンサーが反応して、警報を響かせる。少女が火系魔法を使って、攻撃してきたのだ。
「こいつ……!」
 全員が警棒を取り出し、少女から距離を取り、警戒態勢になった。油断しすぎたか……!!
「魔力を、使いたくないの……邪魔、しないでよ!!!!」
 無気力にも聞こえた少女の声が、突然、ビリビリと空気を震わせる程大きくなった。
 その瞬間、目を見張る程の炎が視界を覆った。

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作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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たまご(プロフ) - めっちゃ面白かったです!アスラ君、大好きでした! (2019年9月26日 7時) (レス) id: 4b6840f9b9 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - チェシャ猫さん» ありがとうございます(*^^*) アスラ君、好きになってもらえて良かったです! (2019年3月24日 2時) (レス) id: a49b6f3827 (このIDを非表示/違反報告)
チェシャ猫(プロフ) - 完結おめでとうございます!いやぁ、めでたしめでたしですね!!アスラ君最後まで大好きでした!お疲れ様でした!! (2019年3月23日 15時) (レス) id: 0582223455 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - なななさん» あなたの事は知ってますよー。コメントどうも! (2017年5月5日 21時) (レス) id: c03204db58 (このIDを非表示/違反報告)
ななな - すっごくおもしろいです!!!!! めつちゃ最高(*゚▽゚*)更新楽しみにしてまふ(( (2017年5月5日 14時) (レス) id: b05e83a60b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:寒極氷化(かんごく ひょうか) | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/orazu/  
作成日時:2016年4月26日 0時

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