〜133〜 ページ36
基準値以上の魔法使用が認められた現場に着くと、その十数m先に怪しげな女がいた。全身の至る所から出血しており、足取りが覚束ず、雨だというのに傘を差していない。明らかな不審者。先程の警報に関係がある可能性が高い。
同僚を見ると、同じ結論に至ったようで、「行くか」と合図を取る。
「セ……、…レン、……」
何事か呟いている女に眉を寄せる。気が触れているかもしれないな……。
「おい、止まれ」
声をかけるが、聞こえなかったのか反応がない。……いや、この距離で聞こえないなんてあるか?
「止まれ!」
先程より近づき、声量を上げる。
やはり反応がない。
「止まれと言っている!」
肩を掴んだ。すると、女はゆっくりとこちらへと振り返った。
恐ろしく顔の整った少女だった。しかしその目には狂気が宿っていて、一瞬たじろいた。いや、何を怯む必要がある。気を取り直し、少女を見る。
「……何」
「お前、基準値以上の魔法を使っただろう」
決めつけた言い方ではあるが、大体、こんなものだ。大きい魔法を使った奴というのは、見たら分かる。
「どうでもいい……」
答えになっていなかった。質問がどうでもいいというより、俺達の存在自体がどうでもいいと言っているようだった。同僚の1人も同じように感じたようで、イラついた調子で少女の前に出た。
「チッ、あまり舐めた態度を取らない方が良い……このまま連行する事もできるんだぞ? 話を聞こうとしてやっているだけマシと思え」
そいつが少女の腕を掴んだ。瞬間、彼女は猛然と睨んだ。抵抗するように、腕を振る。だが、力量差は歴然だ。頭がおかしい奴なのは間違いないだろうが、今時、街中で魔法を使うような奴は大抵こうだ。さっさと連れていくか……。
そう、一瞬気を抜いた隙を突いたかのように、
「ぐぁっ」
同僚の呻き声が聞こえた。
「なっ……」
見れば、同僚の、少女の腕を掴んでいた手が焼け爛れていた。規定値以上の魔法を感知したセンサーが反応して、警報を響かせる。少女が火系魔法を使って、攻撃してきたのだ。
「こいつ……!」
全員が警棒を取り出し、少女から距離を取り、警戒態勢になった。油断しすぎたか……!!
「魔力を、使いたくないの……邪魔、しないでよ!!!!」
無気力にも聞こえた少女の声が、突然、ビリビリと空気を震わせる程大きくなった。
その瞬間、目を見張る程の炎が視界を覆った。
17人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たまご(プロフ) - めっちゃ面白かったです!アスラ君、大好きでした! (2019年9月26日 7時) (レス) id: 4b6840f9b9 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - チェシャ猫さん» ありがとうございます(*^^*) アスラ君、好きになってもらえて良かったです! (2019年3月24日 2時) (レス) id: a49b6f3827 (このIDを非表示/違反報告)
チェシャ猫(プロフ) - 完結おめでとうございます!いやぁ、めでたしめでたしですね!!アスラ君最後まで大好きでした!お疲れ様でした!! (2019年3月23日 15時) (レス) id: 0582223455 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - なななさん» あなたの事は知ってますよー。コメントどうも! (2017年5月5日 21時) (レス) id: c03204db58 (このIDを非表示/違反報告)
ななな - すっごくおもしろいです!!!!! めつちゃ最高(*゚▽゚*)更新楽しみにしてまふ(( (2017年5月5日 14時) (レス) id: b05e83a60b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:寒極氷化(かんごく ひょうか) | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/orazu/
作成日時:2016年4月26日 0時